第九@東京芸術
- 2010.12.28 Tuesday
- 23:57
マエストロ飯守によるベートーヴェン交響曲全曲シリーズの第4回目に位置づけられていることが大事で、年末にやるのは副次的な?意味に過ぎない。となれば自ずから心がけが違ってくるというもの。
いつも?との違い。それは第一楽章からヒシヒシと感じられた。
マルケヴィッチ盤の特長である「一音一音たっぷりに」が十二分に会場に響き渡った。それは重厚な響きとは異にするもの。まさに豊穣な響きという表現がピッタリだ!一音一音の響きを堪能する喜び。
一方、第4楽章に入るまで、何回か客席に目を転じてみた。
いままで出演した演奏会で、客席を凝視することはあまりなかった。でも、今回は違った。お客さんの反応をリアルに自らの眼で体験しておきたかったのかもしれない。自らの意思ではなく、マエストロのタクトから生み出される音楽に触発されたのかもしれない。
一人ひとりの眼を見てみた。それは長く日本人が忘れていた?、何かを追い求める眼に感じられた。
演奏会に来るきっかけはいろいろだ。自ら進んでチケットを買い求めた人、友人知人が出るからなんとなく行ってみようかな?という人もいるだろう。
しかしきっかけはともかく、演奏を聴き始めた途端にそんなことは吹っ飛んでしまった感がある。すべての眼が舞台に釘づけになっている。なにが起こるのか?期待感に満ち溢れている眼だ。
「今日の演奏会は違う」...舞台上に注がれる数多の眼を見た時点で改めて感じた。
後々、「合唱が入るまでは...」なんてことがないように、冷静にかつ情熱を持ってウタわなければ...
第4楽章でファッゴットのソロが奏でるメロディーが始まる涙腺が緩んでしまった...
ソリストのみなさんも超がつく方ばかりだ。これだけ全員のレベルが拮抗している第九もそうあるものではない(個人的には同声とういことで小森さんがすばらしかった!こんなキビキビとした張りのある第九のソロを聞くのは初めてだ。)
そして演奏会は終わった...お客さんの反応は予想以上だった。何分、何回続いたろうか...
今後、会場にいるすべての人(出演者も聴衆も)が満足できる演奏会なんて何回できるだろうか???
その意味では自分にとって、稀有な体験だった。
今日の第九は一生涯忘れえないだろう。
〈データ〉
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第九特別演奏会
東京シティ・フィル 創立35周年記念
ベートーヴェン 交響曲全曲シリーズ 第4回
2010.12.28(火) 19:30
指揮:飯守 泰次郎
ソプラノ:佐々木 典子
アルト:小山 由美
テノール:福井 敬
バリトン:小森 輝彦
合唱:東京シティ・フィル・コーア