楽園とペリ@奏楽堂

  • 2010.11.19 Friday
  • 23:34
その年話題の作曲家の声楽作品を取り上げてくれるので毎年楽しみにしている、藝大フィルハーモニア合唱定期。今年はシューマン生誕200年ということで、なんと「楽園とペリ」
合唱愛好歴ウン年の自分も、曲名しか知らなかったため事前にCDでお勉強。で、感想は「こんな曲があったのか...」
カゼで体調不良だったので、セキをしないようアメを懐に忍ばせて行ってきた。

さて会場内。
合唱は160人程度。藝大生なら十分すぎる人数。で、ソリストがなんと9人!。主役のペリ役を2人(1・2部と3部で分担)で歌うこともあるが、1人で歌うにしても8人(メンデルスゾーン「エリア」と同じ)

で、聞き終えた後の感想は...
初めて聴いたにしては体の中にすぅっと入ってくる感じ、何かなつかしさ・爽やかさを覚えるこの感覚はなんだろうか???曲も時に荒々しく、時にやさしく、美しい。管弦楽も随所にシューマン節が散りばめられ、楽しさこの上ない!
また曲の構成も従前までのオラトリオとは明らかに違う。
語り、アリア、合唱の区分はあってもそれぞれが途切れず流れるように展開され、一体となって迫ってくる。そのため曲が説得力を持ち、聴衆を飽きさせない。それはプログラムの解説で畑野さんも「レチタティーヴォとアリアの伝統的な対立構造を排し、全体を区切りなく進行するよう構成した」と書いているが、まさにそのとおりだ。
ちょっと調べたみた。この作品が書かれたのが1840年代前半、メンデルスゾーンの「エリア」、ワーグナーの歌劇も同じ年代だ(いわゆる楽劇は1850年代以降)。で、曲の構成はどちらに近いかというとワーグナーだろう。

また曲のテーマは魂の救済だが、いわゆるアリアを聴いていても過度に深刻な、場合によっては重苦しい感じがしないのはなぜだろう?これはテクストが聖書ではなく、ある詩人の叙事詩によっていることが関係しているのだろうか?そこには無垢の自然体の信仰心を踏まえた、作者の素直な言葉が綴られているからだと思えてならない。

畑野さんはこの作品を「既存の音楽ジャンルの枠組みを取り除き、聖と俗の世界に橋をかけた」ものだと書いている。なるほど...いままでのオラトリオとは一線を画した新たな手法を取り入れたことによって、新たな世界を切り開いた作品であることを実感した。

特に印象的な曲は、Nr17、ペリと合唱が掛け合いで「Schaf!Schlaf!」と歌う。美しさこの上ない!
Nr18女声合唱もいい!まさにロマン派らしい力強くかつチャーミングな曲だ。そして終曲のNr26。ペリが合唱を伴って一気呵成に歌い上げる。
それにしても、全曲何回も聞きたくなる、クセになりそうな曲だ。

ソリストではアルトの加藤さんが一頭地を抜いていた。深くて奥行きのある朗々とした声が会場に響き渡った。まさにアルトとして求めるアルトらしい声だ。伊原直子さんに師事しているというが、いつかは伊原さんを超えてほしい。
1・2部でペリを歌った金持さん。やや線が細い感じだがペリ役にぴったりの声質と芯のある声でgood! そのまま3部も歌ってほしかったなぁ。
男声ではバスの倉本さんがいい!何がいいって、その面ガマエ(失礼!)格闘家と言われても納得してしまう雰囲気がいい!もちろん、すべては声量や醸し出す雰囲気からバスらしいからいいのだが...
日本人でほんもののバスは数少ない!がんばってほしい!

一方で苦言。
進行役でもあるテノールの市川さん。声はきれいだが子音がはっきりしないため、言葉がぼやけてしまった。進行役は劇の出来具合を左右する重要な役割。メリハリの利いた歌唱を期待したい。
3部でペリ役を歌った竹下さん。終曲はやや頑張りすぎか?たしかに盛り上がるところだが、全曲の流れからするとそれまでの流れとは明らかに違う歌い方。「頑張って歌ってます」と聴衆にわからないように、平然としてクライマックスを迎える歌い方をしてほしかった。

いろいろ感じたが、知らなかった名曲を堪能できた喜びは大きい。有意義な一夜だった。


〈データ〉
藝大定期第343回 藝大フィルハーモニア合唱定期演奏会
“生誕200年” ローベルト・シューマン
2010.11.19(金) 19:00
東京藝術大学奏楽堂

「楽園とペリ」
ペリ(第1部・第2部)、ソプラノ供Ф盪 亜実
ペリ(第3部):竹下 裕美
若い女、ソプラノ機У姪帖〕美
メゾソプラノソロ、アルト機П麁 亜希子
天使、アルトソロ、アルト供Р弾 のぞみ
若者、テノールソロ、テノール機Щ埓遏々席
テノール供田口 昌範
男、バリトンソロ、バリトン:加耒 徹
ガズナ、バス:倉本 晋児

合唱:東京藝術大学音楽学部声楽科学生

指揮:高関 健

【料金】 全自由席 2,000円

エルガー@東京芸術

  • 2010.10.30 Saturday
  • 22:07
体調不良&台風接近という悪条件?だったが、エルガーの声楽作品なので、頑張って行ってきた。

エルガーの代表的な声楽作品は「ゲロンティアスの夢」だが、それだってクラシックファンさえ知らない作品。今日の「生命の光」に及んでは、一部の相当なマニア?じゃなければ知らないし、聞いたこともない作品だろう。というわけで、日本初演らしい。
幸いにも?隠れ英国音楽ファンの自分はかなり前にCDを購入し聞いてるからなんとなく曲の感じはわかる。
そもそもエルガーの曲は叙情的な部分が多く、悠長さ、間延びする雰囲気をいかに引き締めるかが演奏の際の要と思う。

合唱はもちろん東響コーラス。自分は去って5年?ほど経つが、それ以来初めて聴くかもしれない。
人数は約200名。団の方針でもちろん暗譜。じっくり聴いてみた。

確かにこれまでの演奏歴は輝かしいもので、もはやアマチュアを超越している。オケ付属の合唱団ではイチバンだろう。この曲を暗譜であそこまで歌えるのもすばらしい。
しかし、今日は全体的に声質が硬い。声がフワーっと会場全体に響き渡る感じがなく、ダイレクトに客席に届く感じだ。声はもちろんよく出ているんだが...
またffも歌いすぎの感がしないでもない。エルガーの曲想でのffは、たぶん普段の8割ぐらいのほうがピッタリはまると思う。いわばヴェルレクのDies Iraeを突然聴かされた感じで、違和感さえ感じる。

ソリストでは小林さんがピカイチだった。内容を十分理解し、表現力に満ちた歌唱で演奏を引き締めた。他のソリストの方ももっとドラマの中に入っての歌唱を聴かせてほしかった。特に語り手って進行役だから非常に重要だと思うのだが...

指揮は大友さん。かなり前から始まった、この「東京芸術劇場シリーズ」でエルガーの作品を精力的に取り上げてきた方だ。合唱とソリストのバランスなど、もっと曲を引き締めてほしかったが、無難にうまくまとめた感じだ。

こんな自分なりの感想とは裏腹に?終演後客席からは「ブラーボ」と盛大な拍手が続いた。NJPとアルミンクの「七つの封印」でもそうだったが、他のお客さんが受けた印象と自分の印象が違うのは、なんとなくもどかしい、複雑な気持ちになるものだ。


〈データ〉
東京交響楽団 東京芸術劇場シリーズ 第106回
2010.10.30(土) 18:00

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番
エルガー:オラトリオ「生命の光」(日本初演)

ヴァイオリン:ローラン・アルブレヒト・ブロイニンガー
ソプラノ:小林 沙羅
メゾ・ソプラノ:永井 和子
テノール:クリストファー・ジレット
バリトン:クエンティン・ヘイズ ※アシュレイ・ホランドの代役
合唱:東響コーラス

【料金】 C席 3,000円

ウォルトン@サントリー

  • 2010.10.23 Saturday
  • 17:27
 いやいや ウォルトンの名曲「ベルシャザールの饗宴」を年2回聞けるとは思わなかった。

合唱は晋友会。最近聞いた他団の演奏では正直あまり印象に残らなかったが、今日は絶好調、すばらしかった!
人数は150人程度。この曲を演るには十分だ。男女のバランスもいい。
この曲、ダイナミックで劇的な箇所がいくつかあるため、普通のアマチュア合唱団だとffを目いっぱい歌ってしまい、音楽をぶち壊してしまう危険性がある。
しかし、そこは晋友会。ほどよく抑制された、理性的なffで音楽を進めていった。それは出だしの Thus spake Isaiah を聞いてもわかる。最後までオケとの一体感は崩れず、音楽がスムースに流れていった。まさに、心地いい感じだ。
オケも申し分ない。力まず、自然体で音楽をしていた。
欲を言えば、ソロの三原さん、もっとアクを出して欲しかった、演技して欲しかった。この曲でのソロは綺麗な声で歌うことではなく、語るように歌うことを求めていると思うのだが...

しかししかーし、指揮の尾高さんの力によって公演は成功に導かれた。
出だしこそ慎重だったものの、時間を追って右肩あがりの状態。テンポ、間の取り方、オケと合唱のバランス、いづれも絶妙である。いわゆる曲のツボを心得ている。英国音楽をよく研究し理解している。
日本人で英国音楽を取り上げる指揮者は尾高さんや大友さん、あとは秋山さんぐらいだろうか。隠れ英国音楽好き人間(?)にとっては、もっと取り上げる指揮者が増えてほしいなぁ。

今日の演奏、英国の方が聴いていたら泣いて喜ぶだろう。それほど、本国(英国)に持っていっても ブラーボ必至。声楽曲では久しぶりに満足する内容だった。


〈データ〉
日本フィルハーモニー交響楽団 第624回 東京定期演奏会
2010.10.22(土) 14:00
サントリーホール

オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」

指揮:尾高 忠明
バリトン:三原 剛
合唱:晋友会合唱団

【料金】 A席 5,700円

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