ラインの黄金@オペラパレス
- 2015.10.01 Thursday
- 23:14
いよいよ始動した、芸術監督自らの指揮による「リング」。その初日に行ってきた。
何より印象的だったので、終始「生きている音楽」が流れていたことだ。
マエストロの卓越した洞察力は劇をグイグイ引っ張り、紡ぎ出され醸し出される音は見事なまでに言葉とシンクロしながら、その細部まで描写していく。字幕を見ながら「音楽が言葉を表現している」ことに「そうか、そうか」と何度頷いたか。。。
音が素直に体にしみこんでいく感じがなんとも心地いい。音楽が言葉を離れて独り歩きしているのではなく、寄り添うように歩んでいるといってもいいだろうか。
この大曲、そんなには聴きこんでないので歌手の出来不出来の言及は避けたい。ただ、海外キャストはとにかく演技が上手いという印象は強く持った。第三場のアルベリヒが権力に酔いしれる場面などはその最たるもの。
見るほうも当然期待値はある。欲望や嫉妬など人間の持つ様々な面が、その期待値をはるかに超える表現がされてこそ見る者の共感が得られるのではないだろうか。
今回のプロダクションは1996年フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の制作によるとのことだが、「リング」の場合はシンプルなのがいいい。個人的には違和感なく、好意的にとらえることができた。
些細なことだが、ファフナーに殺されたファーゾルトが最後まで舞台上に突っ伏していたのはどうかな?と最初思った。単純に考えれば、殺られた勢いでなだれ込むよう舞台袖に姿を消してもいいのでは?と。しかし、最後まで見ると、舞台のバランスを考えて残したのかな?とも思った。ヴァルハラに入場する神々が正面右上、その対角線上の左下にいるのが突っ伏しているファーゾルト。さて、どうなんでしょう???
東フィルも最後まで緊張感を失わず安定感ある音を出していたのは流石。ただ、音の分厚さを求めるとやや不満も残る。もしやこれはこの会場がもつ構造にでもよるのだろうか?何回か聴いているが、このホールには豊饒な響きが足りないような気がしてならない。仮に東京文化会館で演奏したらどうなんだろうか?と考えてしまう。
いづれにしても物語は始まったばかり。マエストロには健康への十分な留意をお願いし、引き続きワーグナーを聴く喜びを味わわせていただきたい。
〈データ〉
楽劇「ニーベルングの指環」序夜『ラインの黄金』 全1幕
2015.10.1(木) 19:00
新国立劇場 オペラパレス
指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ
ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
ドンナー:黒田博
フロー:片寄純也
ローゲ:ステファン・グールド
ファーゾルト:妻屋秀和
ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
ミーメ:アンドレアス・コンラッド
フリッカ:シモーネ・シュレーダー
フライア:安藤赴美子
エルダ:クリスタ・マイヤー
ヴォークリンデ:増田のり子
ヴェルグンデ:池田香織
フロスヒルデ:清水華澄
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【料金】B席 15,120円
何より印象的だったので、終始「生きている音楽」が流れていたことだ。
マエストロの卓越した洞察力は劇をグイグイ引っ張り、紡ぎ出され醸し出される音は見事なまでに言葉とシンクロしながら、その細部まで描写していく。字幕を見ながら「音楽が言葉を表現している」ことに「そうか、そうか」と何度頷いたか。。。
音が素直に体にしみこんでいく感じがなんとも心地いい。音楽が言葉を離れて独り歩きしているのではなく、寄り添うように歩んでいるといってもいいだろうか。
この大曲、そんなには聴きこんでないので歌手の出来不出来の言及は避けたい。ただ、海外キャストはとにかく演技が上手いという印象は強く持った。第三場のアルベリヒが権力に酔いしれる場面などはその最たるもの。
見るほうも当然期待値はある。欲望や嫉妬など人間の持つ様々な面が、その期待値をはるかに超える表現がされてこそ見る者の共感が得られるのではないだろうか。
今回のプロダクションは1996年フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の制作によるとのことだが、「リング」の場合はシンプルなのがいいい。個人的には違和感なく、好意的にとらえることができた。
些細なことだが、ファフナーに殺されたファーゾルトが最後まで舞台上に突っ伏していたのはどうかな?と最初思った。単純に考えれば、殺られた勢いでなだれ込むよう舞台袖に姿を消してもいいのでは?と。しかし、最後まで見ると、舞台のバランスを考えて残したのかな?とも思った。ヴァルハラに入場する神々が正面右上、その対角線上の左下にいるのが突っ伏しているファーゾルト。さて、どうなんでしょう???
東フィルも最後まで緊張感を失わず安定感ある音を出していたのは流石。ただ、音の分厚さを求めるとやや不満も残る。もしやこれはこの会場がもつ構造にでもよるのだろうか?何回か聴いているが、このホールには豊饒な響きが足りないような気がしてならない。仮に東京文化会館で演奏したらどうなんだろうか?と考えてしまう。
いづれにしても物語は始まったばかり。マエストロには健康への十分な留意をお願いし、引き続きワーグナーを聴く喜びを味わわせていただきたい。
〈データ〉
楽劇「ニーベルングの指環」序夜『ラインの黄金』 全1幕
2015.10.1(木) 19:00
新国立劇場 オペラパレス
指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ
ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
ドンナー:黒田博
フロー:片寄純也
ローゲ:ステファン・グールド
ファーゾルト:妻屋秀和
ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
ミーメ:アンドレアス・コンラッド
フリッカ:シモーネ・シュレーダー
フライア:安藤赴美子
エルダ:クリスタ・マイヤー
ヴォークリンデ:増田のり子
ヴェルグンデ:池田香織
フロスヒルデ:清水華澄
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【料金】B席 15,120円