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トノの音楽そぞろある記

歌と音楽に関するコンテンツです
ドン・パスクァーレ@湖北地区会館
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    砂田さんが出演するというので我孫子まで行ってきた。演目は「ドン・パスクァーレ」。内容はご存知の通り、「お年を召してからの年の差婚は慎まなくては...」という教訓めいたセリフで終わる喜劇であるが、演奏は想像以上に充実したものであった。

     

    まず、ドン・パスクァーレ役の金子さんが手がけたという演出、派手ではないが今に生きる我々の”共感”を感じさせるもの。

    たとえば冒頭「序曲」に乗って登場してきたパスクァーレは介護を受けるかのような状態で、使用人と思しき女性2人にズボンを履かされる始末。ところがミニスカートの若い女性は通り過ぎる時は急に”シャキッ!”となって別人のよう。その視線の先は女性の足に...

     

    そんな小技の利いた演出をバックに、出演者の歌唱も演技も非常に秀逸。

    ドン・バスカーレ役の金子さんは太くて響く声で主役を最後まで熱演。役になり切った衣装や演技も相まって最後まで楽しませてくれた。

    砂田さんも初めてノリーナ役を歌うとのことだが、これがまた素晴らしい!ある時はチャーミングだったり、ある時はいじらしかったり、そしてある時は小悪魔的だったり...と、自在に立ち振る舞いを変える役をきっちりと演じ分けていた。それも高い歌唱力とともに。

    エルネスト役の曽我さんは軽く伸びやかな声が魅力だし、マラテスタ役の薮内さんはスカッとするバリトンだが、演技も堂に入ったもの。

    たぶん金子さんが指導していると思われる合唱関係の方も、他の役柄(冒頭のお二人の女性も)で参加。有名な「なんて果てしない騒ぎでしょう」も歌って健闘。

    さらに驚くのは、抜粋かと思いきや全3幕を通したこと。あっという間の2時間半だった。

     

    先日、びわ湖ホールで聴いたばかりの今日の演目。比べるつもりはまったくないが、本来の”演技+歌”を見たい聴きたいのなら、このくらいの小ホールが理想だ。やはり演技者の表情がわかるのは歌にも相乗効果があり、特に”歌”を聞かせるドニゼッテイは最適だ。

    また、地域でのささやかな活動の成果としてプロもアマも楽しめる場づくり。そんな地道な活動も今後とも応援していきたいと感じたひと時であった。

     

     

    〈データ〉

     

    PICCOLO TEATRO ABIKO

    2016.11.23(水) 14:00

    我孫子市湖北地区公民館

     

    ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクァーレ」(全3幕)

     

    ドン・パスクァーレ:金子 亮平

    ノリーナ:砂田 愛梨

    エルネスト:曽我 雄一

    マラテスタ:薮内 俊弥

    公証人:浅山 裕志

     

    指揮:澤木 和彦

    ピアノ:中村 文美

    合唱:The Lacas

     

    【料金】 3,500円

     

     

     

     

     

     

    | オペラ2016 | 22:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
    ドン・パスクワーレ@びわ湖ホール
    0

      ドニゼッティと言えば、日本では「ルチア」か「愛の妙薬」しか上演されてないような気がする中、沼尻さんが滅多に上演されない「ドン・パスクワーレ」を振るというので、びわ湖ホールに出かけてきた。

      さて結果は???大健闘だった。

       

      浅薄な知識しか持ち合わせていないこともあるし、先入観や固定観念がそう思わせるかわからないが、日本人がドニゼッティやロッシーニなどの喜劇をやるのは不得手だろうと感じていた。それが今日の演奏を聴いて、少しは払拭された感がある。成功はキャストに恵まれたことが第一だろう。

       

      いずれのキャストも光っていたが、印象的だったのは砂川さん。出演するオペラを生で見たのは初めてかもしれないが、出色の出来。これまで砂川さんに対しては「美声だが線が細いかな...」との印象があった。しかし、今日は存在感抜群。演技もいいが、声が太く、伸びやかになっている。”Quel Guardo Il Cavaliere”なんて、ノリーナそのもの。

      須藤さんも以前聴いた印象では、声のささえが不十分のような気がしたが、これが堂々たるものに。

      ベテランの牧野さん。最初こそ音楽に乗り切れてないかな?と思われるところもあり、第1幕の聞かせどころ ”Un foco insolito mi sento adosso" もワクワク感・躍動感がいまひとつ。しかし次第に乗ってきて、演技でもその存在感大だった。

       

      シラグーザはある意味別格。あのキラキラする伸びやかな声は天性のものとしか思えず、日本人がマネしようと思っても努力でできるものではない。舞台裏から聞こえてきた "Com' e gentil la notte a mezzo april!" の軽やかさ、華やかさはなんといって表現したらいいのだろう。出身がシチリアのメッシーナというからさもありなんといったところか。彼が悲しい歌を歌ってもそうは聞えないからある意味損かもしれないが...

       

      ドニゼッティの作品では、時として合唱もポイントになるが、びわ湖ホール声楽アンサンブルと藤原歌劇団合唱部による”Che interminabile andirivieni” は文句のつけようのないアンサンブル。素晴らしい!

       

      指揮の沼尻さん、丁寧に、大事に作品を仕上げたが、印象としてはやや慎重だった感じ。その分作品が持つ、ちょっとした”間”や”ゆらぎ感”がなくなってしまったのは残念。次回はさらに期待したい。

       

      初めてこのホールに来たが、その響の素晴らしさに感動。歌手の声がすぐ目前で歌っているように聞こえるのは自分の錯覚か???そして言葉もくっきり聞こえる。果たして他のホールもこんなに聴こえただろうか?と考えてしまったほどだ。

      そんな素敵なホールで、来春にはこれまた上演のレアな「連隊の娘」、そして沼尻さんによる4年がかりの「リング」が始まるという。今後も「びわ湖」から目が離せない。

       

       

      〈データ〉

       

       

      沼尻竜典オペラセレクション ドン・パスクワーレ

      2016.10.23(日) 14:00

      滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

       

       

      ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

       

      指揮:沼尻 竜典

      ドン・パスクワーレ(バリトン):牧野 正人

      マラテスタ(バリトン):須藤 信吾

      エルネスト(テノール):アントニーノ・シラグーザ

      ノリーナ(ソプラノ):砂川 涼子

      公証人:柴山 秀明

      合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部

      管弦楽:日本センチュリー交響楽団

       

      【料金】 B席 11,000円

       

       

       

       

       

      | オペラ2016 | 21:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
      イリス@オーチャード
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        マスカーニといえば、一般的には「カヴァレリア...」しか浮かんでこないが、「イリス」という作品もあることは知っていた。演奏会形式とはいえ、その「イリス」の上演があるというので行ってきた。指揮はここ3年程前から評判の高いバッティストーニ。彼をこの目で確かめるのも初めてなので、見どころ聴きどころ満載の演奏会だ。

         

        聴き終わって...

        いやいや、評判どおり、いや想像以上の才能溢れた彼の指揮に感動。指揮者を見てワクワクしたのは久しぶりかもしれない。

        一言で言うと、指揮に全く無理がなく、自然と音を引き出す能力の抜群の高さだ。

         

        たとえば、冒頭、弦のppから始まり、じわりじわりと音の集積が進んで、最後は壮麗な合唱に至るまでの一連の音楽の流れが、まったくもって自然体。結果的には大きな腕の振りになるが、それが前もって予定されていたことではなく、結果的にそうなっただけの話という具合。

        音の振幅も階段を上っていくようなザグザグのぎこちなさはまったくなく、スロープを上るような滑らかさなので、音楽のしなやかさを全く失わない。これは凄いことだと思う。

         

        たぶんオケも非常に弾きやすいだろうことは間違いない。オケの反応も即応的かつしなやかであり、表出される立体的な音の造形が目に見えるよう。それがさらに指揮者に伝わり...という好循環を生み出しているのだから秀演にならないはずがない。聴衆も指揮を見ているだけでも素晴らしいうえ、場面で期待した音がオケから確実に伝わってくるのだから、聴いていて心地いいことこの上ない。

         

        キャストでは主役を務めたラケーレ・スターニシの独断場と言ってもいい。作品が求める声質を体現している感。父役の妻屋さんも存在感を示す熱演。80名ほどの新国合唱団も十二分な声量と響きで大いに盛り上げた。

         

        作品自体は冒頭や終曲の合唱、あるいは第2幕のフィナーレ等オペラらしい高揚感に包まれる個所はあるが、台本が弱いためか何か物足りない。しかし、見事な指揮とそれに応えたキャストやオケによって、想像以上の感動を聴衆にもたらした。

         

        彼を聴いたのは今日初めてだが、「また彼の指揮を見たい」「彼なら何かやってくれそう」という期待感や雰囲気を持っている逸材なのは確か。今年10月から東フィルの首席指揮者に就任したというがそれも納得の感。順調に行けば、将来欧米の歌劇場でそれなりのポストに就くことは間違いない。

        来年9月に「オテロ」を振るというが、今日の演奏を聴けばどんな演奏になるか今から想像してもワクワクする。今後も大注目だ。

         

        P.S. いくら「ジャポニズム」とはいえ、名前が「大阪」や「京都」は安易すぎ?あるいはその程度の認識だったとも言えるが...

         

         

        〈データ〉

         

        東京フィルハーモニー交響楽団 第886回 オーチャード定期演奏会

        2016.10.16(日) 15:00

        オーチャードホール

         

        マスカーニ:イリス

         

        指揮:アンドレア・バッティストーニ

         

        イリス(ソプラノ):ラケーレ・スターニシ

        チェーコ(バス):妻屋 秀和

        大阪(テノール):フランチェスコ・アニーレ

        京都(バリトン):町 秀和

        ディーア(ソプラノ):鷲尾 麻衣

        行商人/くず拾い(テノール):伊達 英二

        合唱:新国立劇場合唱団

         

         

        【料金】 B席 7,000円

         

         

        | オペラ2016 | 21:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
        ワルキューレ@新国立劇場
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          マエストロ飯守による「リング」第一夜、「ワルキューレ」の公演4日目に出かけた。マチネだというのに客席は満員の盛況。

           

          見終わって、正直これほど力まず「すぅー」と体に入ってきたワーグナーも珍しい。

          ワーグナーと聞くと聴く方もそれなりに力が入りそうになるが、それがまったくなかった。醸し出される音楽に自然に体を預けることができたといってもいい。

           

          理由を考えたが、最大の要因は理想的なキャストに恵まれたことだろう。

           

          以前、風のたよりに聞いた話では、今回の一連の企画のためにマエストロ自らが渡欧し自分の目で確かな人材を選んできたという。それを証明するようかのように、主要キャストが聴く側にとって何の憂いも感じさせないくらいの理想的な表現をしていた。歌唱しかり演技しかり。
          並みの公演だったら、”すごい声”や”迫真の演技”に圧倒されるのだが、決して背伸びをしているわけでもなくごくごく自然体。ある意味、普通と言ってもいいが、ここで言う普通は並みの普通ではない。キャストは普通の段階をはるかに超えた、”別次元での普通”を歌い演じていたといってもいい。普通の”普"は普遍性の”普”でもある。ここまでに至るには、相当な修練がなければ達しない境地だろう(あるいはセンスが抜群なのかもしれないが...)。

           

          どの場面を切り取っても秀演だがあえてワンシーンを選ぶとすると、やはり第3幕の父と娘の愛と葛藤の場面だろう。愛するがゆえに、愛すればこそ別れなければならならない父と娘の姿は涙なくして語れない。このシーンも演技している感はまったくなく、二人の語らいを周りの聴衆が静かに見守っているという雰囲気だった。

           

          最後までキャストに寄り添うように、音を積み重ねていったマエストロの指揮は、気張る個所も全くなく、すべては物語の進行に合わせた音の振幅感は流石。ゲッツ・フリードリヒのシンプルな奇をてらわない演出も見る者に安心感を与えたことは間違いない。

          東フィルの集中度も最後まで途切れず、安定感を保っていたのは賞賛に値する。ただ、第2幕第四場のブリュンヒルデの死の告知の冒頭の管楽器の不安定さは心残りの感。ここはある意味重要な局面であり、スッキリと何の憂いもなく音の響きに浸りたかった。

           

          第3幕冒頭、日本人歌手も「ワルキューレたち」として歌い演じていたが、健闘していたとはいえそれまでの”凄演”を見聴きした後では残念ながら歌唱の差は圧倒的に違った。考えるに、技術云々の問題ではなく、もっと根源的な”体格的”にわれわれ日本人にとってワーグナーはその本質を再現するには困難な作曲家のひとりだと改めて思った次第。

           

          来年、残る2作品を演ってマエストロによる「リング」は完結となる。とにかくマエストロには体調管理を万全にして、その完結をこの目で確かめさせてほしいと心から願うばかりだ。

           

           

          〈データ〉

           

           

          平成28年度 文化庁芸術祭主催公演

          2016.10.12(水) 14:00

          新国立劇場 オペラパレス

           

          ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指輪」第1日 ワルキューレ

           

          指揮:飯守 泰次郎

          演出:ゲッツ:フリードリヒ

           

          ジークムント:ステファン・グールド

          フンディング:アルベルト・ペーゼンドルファー

          ヴォータン:グリア・グリムスレイ

          ジークリンデ:ジョゼフィーネ・ウェーバー

          ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン

          フリッカ:エレナ・ツィトコーワ

           

          管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

           

          【料金】 B席 15,120円

           

           

           

           

          | オペラ2016 | 23:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
          ジャンニ・スキッキ@新国立
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            砂田さんが出演するというので、オペラ研修所の試演会に行ってきた。演目はご存じ、遺産に目が眩んだ”悪党ども”が”悪党”にいっぱい食わされるという「ジャンニ・スキッキ」

             

            所長の永井さんはプログラムの冒頭に「各自、段階の違いこそあれ、各々が自身の修練から得た力を出し合い、この密度の高いアンサンブルの核となることを目指して織り成された成果をご覧頂き、喜劇の味を堪能していただければ幸い」と書かれているが、まさにその通りの演奏。

             

            端役は誰ひとりとしていない中、将来有望な若手が力むことなくお芝居を楽しみながら演じていた様が手に取るようにわかる。その意味では、若手が演じるにはもってこいの演目なのかもしれない。伴奏は2台のピアノと打楽器のみとシンプルだが、村上さんの小気味いい指揮もあり、かえって演技を浮立たせるのに成功した感。

             

            キャストの中では、ジャンニ・スキッキを演じた伊良波さんが印象的。明瞭な発声と堂々とした立ち振る舞いは役どころにピタリ。面構えもいい。今後が楽しみなバリトンだ。

             

            小劇場には初めて入ったが、人が歩くたびに床がギシギシ鳴るし、座席には座布団が用意されているなど、”芝居小屋”風。試演や実験の場としてはおもしろい空間だ。

             

            秋には研修生によるガラ、来年2月には終了公演が予定されており、今後も楽しみな研修所公演だ。

             

             

            〈データ〉

             

            新国立劇場オペラ研修所 オペラ試演会

            2016.7.2(土) 14:00

            新国立劇場 小劇場

             ※1(金)、2(日)は一部別キャスト。

             

            プッチーニ:ジャンニ・スキッキ

             

            ジャンニ・スキッキ:伊良波 良真

            ラウレッタ:城村 紗智

            ツィータ:高橋 紫乃

            リヌッチョ:岸波 愛学

            ゲラルド:水野 優

            ネッラ:宮地 江奈

            ベット・ディ・シャーニ:松中 哲平

            シモーネ:氷見 健一郎

            マルコ:高橋 正尚

            チェスカ:砂田 愛梨

            スピネッロッチョ先生、アマンティオ・ニコーラオ:山田 大智

            ピネッリーノ:松村 恒矢

            グッチョ:荏原 孝弥

            ゲラルディーノ:竹村 真実

             

            指揮:村上 寿昭

             

            【料金】 全席指定 2,160円

             

            | オペラ2016 | 22:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
            ジークフリート@東京文化
            0
              マエストロ・ヤノフスキによる東京春祭の「リング」も「第2日」
              「序夜」「第1日」とも絶賛だったが、この「第2日」は自分もワーグナーに耳慣れたせいか、これまでを上回るであろう極上の出来。鮮烈な印象を残してくれた。

              兎にも角にも、ハイレベルなソリスト陣を抜きにして、今回の成功を語ることはできない。
              10分20分歌い続けようと全く減衰することのない強靭な声量、全身から発せられ会場内に響き渡る懐深い声質、明瞭極まりない発音、そして歌い込むことでしか体得できないであろう音楽表現。どれが欠けてもワーグナーの音楽に近づくことはできないと思われるが、今回はどれ一つ欠けることなく、すべてが出そろった感である。特にジークフリート役のAndreas Schager,ミーメ役のGerhard Siegelの歌いっぷりは驚異的。仮にプロの方が聴いても脱帽であろし、ワーグナー歌手なら垂涎の的であることは間違いない。

              「歌と音楽が一体となって...」とはよく言われる表現だが、特にそれが顕著であるワーグナーの音楽の魅力を考えてみた。
              たとえ歌詞の意味が分からずとも、歌もある意味管弦楽の一部となって取り込まれ音楽に広がりを与えてくれる、想像力を与えてくれる存在としてキラ星のごとく存在している。
              第一幕フィナーレの ”Her Mit Den Stucken, Fort Mit Dem Stumper” からのミーメとジークフリートとの剣を鍛えるやり取り、そして”Heil Dir, Sonne! Heil Dir, Licht!” からの第三幕のブリュンヒルデの目覚めから終幕までなどは特に印象深い。
              そんなことを考えると、彼の音楽は耳でだけ聴くのではなく、体全体を使って楽曲のすべてを吸収しきることでしか満足感を得られないものであろう。絶えず流れている川の流れの中で、早瀬の白い気泡を眺めていても川の全体像をつかむことは無理なように、動きを止めない彼の作品から断片的にアリアっぽいものだけを取り出して聴いても、作品の核心に迫ることは困難だ。

              管弦楽はN響だが大健闘。驚くほどの鋭い、引き締まった合奏力を披露していた。日ごろから評価の高いドイツ的な響きがより深まった感があり心地いい限り(因みに、今回のプログラムにはゲスト・コンマスとしてライナー・キュッヘル氏の名が初めてクレジットされていた)

              そしてそして今回もそんな”極演”を平然とやってのけたのが、マエストロ・ヤノフスキ。
              最後まで一音たりとも音楽が揺ぐことなく、流れが滞ることなく、一筆書きのように終着点を見極めて音楽を作っていく構成力の高さは尋常ではない。たぶん歌手もオケもなんらストレスも感じることなく、マエストロの差し出す”流れの棒”に素直に乗って、楽しんで演奏し切れたからこそ名演ができたのではないだろうか。
              素人目には何らアピールするような仕草はまったくないのに、どうしてこんな響きが出せるのか、まさに神がかり的。本来指揮とは心のうちでするものなのかもしれない。今年のバイロイトに出演するというがある意味で当然というべきか。

              来年の「第3日」まで続くかのような錯覚さえ覚えたカーテンコールの嵐を聴きながら、興奮の余韻はいまだ冷めやらず。


              〈データ〉

              東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.7
              「ニーベルングの指輪」第2日 ジークフリート
              2016.4.7(木) 15:00
              東京文化会館 大ホール

              指揮:マレク・ヤノフスキ
              ジークフリート:アンドレアス・シャーガー
              ブリュンヒルデ:エリカ・ズンネガルド
              さすらい人:エギルス・シリンス
              ミーメ:ゲルハルト・シーゲル
              アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
              ファーフナー:シム・インスン
              エルダ:ヴィーブケ・レームクール
              森の鳥:清水理恵
              管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)

              【料金】 C席 9,300円
              | オペラ2016 | 22:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
              オランダ人@神奈川県民ホール
              0
                前日の本番の疲れが残っていたものの、「オランダ人」を聴きに横浜まで出かけた。朝から冷たい雨が降りしきるあいにくの天気だったが、公演終了後は澄みやかに晴れ渡る青空が広がっていた。公演内容もそれに呼応するかのような素晴らしい出来だった。

                それぞれのキャストがその役割にふさわしい歌唱をしていたのが何よりだ。
                まず、オランダ人のロバート・ボーク。大柄な体格から発せられる図太い声は最後まで生き生きとし、舞台を引っ張った。ダーラントの斉木さんもたぶん初めて聴いたことになるとは思うが、オランダ人と互角に渡り合った歌いっぷりは見事。あれだけ安定した声で歌えるバス歌手は日本ではなかなか少ない。「オペラに欠かせないバス歌手」とパンフに書いてある通りである。
                ゼンタの横山さんも文句なしの出来。欲を言えばあとわずかに声量が増し、覆いかぶさるような音の深みが加わればさらに輝くに違いない。
                意外と言っては失礼だが、樋口さんのエリックも秀逸。これまでは甘い美声とのイメージが先行した関係か線が細いのではとの印象だったが、鋭角的な声が会場に響き渡った。ただワーグナーならあと一回りの声の太さがあってもいいとの印象。

                そんなソリストの個の力が十分に発揮されたのだから、第1幕でのダーラントとオランダ人との出会い、第2幕のゼンタのバラード、オランダ人とゼンタの二重唱、第3幕のオランダ人の絶望と三重唱などの聴きどころも聴きごたえ十分。

                今回は合唱も気合十分。二期会、新国立、藤原とそろい踏み。
                もう4年近く前になるが、アマオケながら「オランダ人」全曲演奏に合唱として参加させていただいたことがある。その時に感じたのは、オペラの合唱曲をアマチュアがやろうとするにはかなりハードルが高いということだった。
                曲によっては言葉がついていけないことももちろんあるが、それ以上に難しいのは、たとえて言うなら、移動しながら回っている縄跳びの縄に、何事もなかったかのようにこちらも動きながら「すうっ」と入ることである。
                そんな困難を知っているからこそ、当然といえばそれまでだが、難なくやってのけるプロ合唱団の出来に敬服。特にノルウェー船から幽霊船の合唱に切替わる際と、荒れ狂ったのち一瞬のうちに静まり返る引き際の良さは見事というしかない。

                ミヒャエル・ハンペによる演出は奇をてらうことなくわかりやすもの。CGの映像で幽霊船を表現したかと思えば、場面転換なく船上の表情が変わる。これも技術を駆使した最近の傾向だろうか。
                最後は「終生にわたるオランダ人への救済」が偽りでないことを明らかにするため、自らの身を海に投げるゼンタの影を見ると、手を広げての十字架の姿があった。たぶんだが、どの方向からでもその影が十字架に見えるようにしたのではないだろうか。
                その後、終始舞台上に伏していた舵手が眠りから覚めると、これまでのことがすべて夢であったかのように海は凪、船長や仲間がいるいつもの船上の光景が広がっている。いづれも心憎い演出である。

                そんなどこを取り出しても満足のいく公演の成功はマエストロ沼尻の力量だろう。
                ここ何年かはオペラを指揮されているようだが、正直以前のオケを中心に振っていた時でさえマエストロの演奏を聴く機会はほとんどなかったといっていい。知っていたのはピアノも抜群にうまい天才肌の方程度のこと。
                しかし、今日の演奏を聴いてみて、素質や努力に裏打ちされた抜群のバランス感覚に目を見張った。全曲を通して、音楽として飛び出て聞こえるところはどこもなく、すべて一つの作品として同じ水準が保たれている。
                たとえば、序曲一つとっても頭では「冷静に」と分かっていながらも「やったるか」的に力が入ってしまうのが人間の性でもあるがそれがない。すうっと物語に観客を引き入れ、そのまま続けていってしまう。
                オペラとオケの両方を満足いくように表現できる指揮者は多くはない。ましてや日本人となるともっとだ。年齢も50代前半と若い。遅まきながらではあるが、今後はそのオペラ指揮には目が離せなくなった。
                順調にキャリアを重ねていけば、近い将来間違いなくオペラ部門でもそれなりのポストに就く方であり、就いてほしいと思った。

                20分は続いたであろうカーテンコール。そんな良い演奏会に巡り合えたことを素直に喜びたい。


                〈データ〉

                神奈川県民ホール オペラシリーズ2016
                2016.3.19(土) 14:00
                神奈川県民ホール大ホール
                ※20(日)も同時刻で開催

                ワーグナー:さまよえるオランダ人

                指揮:沼尻 竜典
                ダーラント:ロバート・ボーク
                ダーラント:斉木 健詞
                ゼンタ:横山 恵子
                エリック:樋口 達哉
                マリー:竹本 節子
                舵手:高橋 淳

                【料金】 C席 6,000円


                 
                | オペラ2016 | 20:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
                フィガロの結婚@新国立
                0
                  砂田さんからのお誘いで、オペラ研修所修了公演に行ってきた。仕事の関係で、後半からしか観劇できなかったが...

                  明日のオペラ界を担う有能な若者が歌い演じる様は、見ているだけで晴れやかな気分になる。その中でも印象に残ったのは女声陣か?

                  伯爵夫人の飯塚さんは堂々とした振る舞いで夫人そのもの。昨年11月のオペラ・ガラでプーランクを歌い、出色の出来だった種谷さんの今日の役どころはスザンナ。演技・歌唱とも安定しており申し分ない。今後とも注目の方だ。
                  そして、砂田さんはバルバリーナ役。花柄のワンピースをさっらっと着こなして今にもダンスが始まりそうな軽やかさ。その一声だけで雰囲気が「ぱっ」と明るくなる華やかさ。カーテンコールでも賞賛されたのは納得のことだ。

                  手元にあるプログラムにオペラ研修所の講師一覧がある。指揮、ピアニストはもとより、招聘声楽講師、演技指導、ヒストリカルダンス、クラシック・バレエ、日本舞踊、ソシアルダンス、殺陣指導、イタリア語発音指導、ドイツ語発音指導、フランス語発音指導等々。オペラ歌手になるというのはあらゆることをこなす能力が要求されるのがよくわかる。

                  過日、ある中堅の歌手の方がコンサート終了後のトークで「今は当所で再度勉強していて学生時代に戻った気分です。プロになるとなかなか落ち着いて勉強とはいかないので気持ちも新たにしています」旨を話していた。
                  新国の研修生も研修修了後、今のような恵まれた環境で勉強できることはないだろう。それだけに今を確実にものにする精進を重ねていってほしいものだ。

                  〈データ〉

                  新国立劇場 オペラ研修所修了公演
                  2016.2.19(金) 18:00
                  新国立劇場中劇場
                  ※他日の公演あり

                  モーツァルト:フィガロの結婚
                  フィガロ:松中 哲平
                  アルマヴィーラ伯爵:小林 啓倫
                  バルトロ:氷見 健一郎
                  スザンナ:種谷 典子
                  伯爵夫人:飯塚 茉莉子
                  ケルビーノ:高橋 紫乃
                  マルチェッリーナ:藤井 麻美
                  バジリオ:岩浪 愛学
                  ドン・クルツィオ:水野 秀樹
                  アントーニオ:山田 大智
                  バルバリーナ:砂田 愛梨
                  花嫁機У榁蓮々焼
                  花嫁供У氾帖“咲子

                  指揮:河原 忠之
                  管弦楽:新国立アカデミーアンサンブル
                  合唱:東京音楽大学

                  【料金】 全席指定 4,320円
                   
                  | オペラ2016 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
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