Cecilia Bartoli@Philharmonie Essen

  • 2017.11.25 Saturday
  • 23:42

ついにというか、まったくもって幸運というか、あの超絶の歌唱をする、Cecilia Bartoliを聴く機会を得た。

当初は別の演目を聴くつもりで安価な席のチケットを手配していた。が、前日何気なくEssenでのイベントを見ていたら、なんと彼女が明日歌うという。事前のチェック漏れを悔やみつつも早速手配。舞台袖のかろうじて残ってる席を確保し、その時を待った。

 

そのEssenという街。昨日のDuisburgからは電車で20分程度とほど近い。人口規模でいえば昨日のDuisbugが約48万、今日のEssenが約57万ということらしい(ちなみに昨日のDusserdorfは約60万)。

会場のPhilharmonie EssenはEssen Hbf(エッセン中央駅)の南、歩いて10分程度の、広大な公園内の一角にあった。暗闇に発する光がまぶし過ぎるほどだ。

 

 

外観もそうだが建物内も現代的。クロークやホワイエも十二分な空間を確保しているため居心地がいい。だが、余計な表示をしていないこともあり、自力で自席にたどり着くのは至難。随所に立つ案内担当の女性に確認してようやく自席に。

内部はどこからでも舞台が観やすいつくりで申し分ない。

 

 

さて、今日の彼女はチェロのSol Gabettaとの最新アルバム「Dolce Duello」に含まれる曲を中心にしているため、歌った曲は7曲と控えめだが、いずれも彼女の”奇跡的”と言っていい歌唱を堪能するには不足はない。

中でも強く印象に残った3曲を挙げてみた。

 

 Albinoniの"Aure andate e baciate"はbaciateという単語にもあるように、ワクワク”!ドキドキ!が連続する内容であり、共演した3曲の中では最も快活で成功した曲。彼女もノリノリならSol Gabettamも思わず体が弾んでしまうくらい息の合ったコラボレーションであり、2人が楽しく歌い演奏するさまが会場内に満ち満ちた。

 

次は Händelのアリアでは最も有名な曲のひとつである、"Lascia la spina"。この曲を聴いてこんな緊張感に包まれるとは思いもしなかった。

それは開始の冒頭から感じられたが、彼女とコンマスとのタイミング合わせの時、一瞬彼女の顔が「そうじゃない」と言わんばかりの厳しい表情になった。演奏開始後もそんな彼女の意図を汲み取るように、コンマスは終始彼女とのアンサンブルのタイミングを図っていた。それは傍で観ていても明らかにわかるほどであり、会場も水面に波形も立たせないような緊張感が張り詰めていた。さもありなんだろう。

彼女ぐらいになるとゲネプロでタイミングを合わせてもある意味、無意味になりかねない。というのも本番時には心模様によってはテンポ感は異なることがあるのではないだろうか。加えて、曲全体がadagioモードであり、更に遅いテンポになったらテンポ感がわからなくなる恐れがある。

コンマスの最後のひと引きの弓が弦から離れたとき、すべてが開放されたかのような万雷の拍手が場内に響き渡った。彼女の満面の笑顔とともに。

 

最後に取り上げるのはRaupachの"O placido il mare"。彼女のアルバム「St Petersburg」」に収められている曲だが、変幻自在に声を操る、彼女の卓越した能力を堪能するにはふさわしい曲のひとつと言っていい。たった一曲を、あたかもドラマのように、語りながら歌うように描き分ける凄み。聴衆は次々に繰り出される彼女の喜怒哀楽に一喜一憂しながらも、異次元の音空間に酔いしれた。"Lascia la spina"を上回る、今日最大の賞賛だった。

 

またコンサート全体もオケのみあり、チェロの協奏曲ありと聴衆を大いに楽しませてくれるプログラム。Sol Gabettaの高い音楽性といい、コンマスのAndrés Gabetta (Sol Gabettaの兄らしい)の強力なリーダーシップといい、申し分ない。

偶然発見したコンサートだったが、それだけに無上の喜び。感謝感謝。

 

 

〈Data〉

 

 

Große Stimmen

Alte Musik bei Kerzenschein

Cecilia & Sol

"Dolce Duello"

Barocke Arien für Stimme und Violoncello

 

25.11.2017 Samstag 20:00Uhr

Philharmonie Essen Alfried Krupp Saal

 

Cecilia Bartoli, Mezzosopran

Sol Gabetta, Violoncello

Cappella Gabetta

 

Johann Adolf Hasse

Ouvertüre zu "Il Ciro riconosciuto"

Antonio Caldara

"Fortuna e speranza"

Arie der Emirena aus "Nitocri"

Tomaso Albinoni

"Aure andate e baciate"

Arie der Zefiro aus "Il nascimento dell’Aurora"

Domenico Gabrielli

"Aure voi de’ miei sospiri"

Arie der Inomenia aus "San Sigismondo, re di Borgogna"

Carlo Francesco Pollarolo

Ouvertüre zu "Ariodante"

Georg Friedrich Händel

"Lascia la spina"

Arie des Piacere aus "Il Trionfo del Tempo e del Disinganno", HWV 46

Hermann Raupach

"O placido il mare"

Arie der Laodice aus "Siroe, re di Persia"

Georg Friedrich Händel

"What Passion cannot Music raise and quell !"

Arie aus "Ode for St. Cecilia’s Day"

 

Pause

 

Luigi Boccherini

Konzert Nr. 10 D-Dur für Violoncello und Orchester, G 483

Christoph Willibald Gluck

"Dance of the Furies"aus "Orfeo ed Euridice"

Luigi Boccherini

"Se d’un amor tiranno"

Arie G 557

 

 

【Pries】75.00€

イワン雷帝@NHKホール

  • 2017.11.17 Friday
  • 23:41

演奏会開催の情報を知ったとき、「来た!きた、キター!」というのが正直な感想だった。この曲はおもしろい!と何回かこのブログでも書いたが、遂にだ...

何せ、この曲は今から35年前、自分のクラシックへの扉を開いてくれたデビュー曲なのだから、思い入れもひとしお!加えて日本での演奏は「滅多にない」うえ、今回の指揮が最近活躍著しいソヒエフなのだからたまらない!

そんな大きなる期待を胸に会場へ向かい、演奏を聴いた感想はと言うと...

うーん...期待があまりにも大きすぎたのか、正直言うと個人的には満足とは言い難いかった。一言で言えば、きれいに纏まってはいたが、面白さが物足りない。

 

まず、決定的だったのが曲のテンポ。

全体的にやや遅い感じでこれがソヒエフのテンポ感だろうが、自分の思い描くのはもっとAllegroに近いもの。前口上に続く冒頭の「序曲」からして自分から見れば「ゆったり感」であったため、やや拍子抜け。ここはもっとキビキビとした演奏であってほしかったし、他の一部の曲も望む以上の速さではなかったのは惜しい。速さは緊張感を生むと思うが...

 

そして意外と少なかったのが音のうねりを感じさせてダイナミック感。

全20曲、一曲一曲が個性的な曲であり、その気になれば如何様にも描き分けることができると思うのだが、それが少ないために没個性の塊のように平板になってしまった。これでは曲全体の面白さも半減してしまう。

 

また、合唱は総勢140名ほど(男声40、女声60、児童合唱40)。きれいには歌っていたが、この曲はきれいに歌うことだけを求めてはいない。求めているのは一番は「躍動感」であり「荒々しさ」、時には「野蛮さ」、時には「清らかさ」だろう。たとえば、「序曲」の合唱は「黒き雨雲が沸き上がり」である。その意味する内容を髣髴とさせるには、一音一音ごとにsfを刻むぐらいの勢いがなければ面白くない!「白鳥」はもっともっと女声陣が華やかさを出さなければ...

 

語りの片岡愛之助さんは冒頭、オケと被ってしまい、語りの内容がはっきりと聞き取れなかったこと以外は徐々に調子が乗ってきて、健闘したと言えよう。

35年前の時はバス歌手の岡村喬生さんだったが、この曲の語りは劇をリードする重要な役割がある。

聴き終わって改めて考えてみると、一応音楽上「オラトリオ」という範疇には入っているが、「独唱、合唱、オーケストラを伴った一人芝居」と言ったほうが曲の面白さを伝えるには適しているのではないかと感じた。

例えば、若かりしころの江守徹さんや平幹二郎さん級の方を「語り」に迎えて演ったら、面白さ100倍になるのではないだろうか。

 

できることだったら、出演者の方全員に、オリジナルの「イワン雷帝」を見ておいてほしかった。あの、ある意味不気味な、毒々しいエイゼンシュテインのたぐいまれな映像を見たら、今日の演奏はがらっと変わっていたことだろう。

 

今日聴いたのは2006年9月のデプリースト指揮都響による演奏以来なのだから、なんと11年ぶり。となると次は11年後???

海外に行けばもっと聴けるチャンスは増えるが、「語り」は日本語で聴きたいことを考えると、ぜひ再び、近い将来、国内で演奏してほしい。そう願いながら"予習”のためにCDに手が伸びてしまった。

 

P.S.独断的お薦めCD

やはり、ムーティ指揮のフィルハーモニア(1977年)が断トツ。語りがロシア語であり演じ方も抜群!オケも合唱もキビキビ。ムーティの劇的な音楽づくりも素晴らしい!スラトキン&BBC響のプロムスライブ(2003年)も、語りは英語だが演奏は悪くない。

一方、今日のソヒエフやゲルギエフ版もあるがいずれも「語り」はない。

 

 

〈データ〉

 

 

第1871回 NHK交響楽団 定期公演

2017.11.17(金) 19:00

NHKホール

 

プロコフィエフ(スタセビッチ編):オラトリオ「イワン雷帝」

 

指揮:トゥガン・ソヒエフ

メゾ・ソプラノ:スヴェトラーナ・シーロヴァ

バリトン:アンドレイ・キマチ

合唱:東京混声合唱団

児童合唱:東京少年少女合唱隊

語り:片岡 愛之助

 

【料金】 E席 2,000円

 

 

 

 

 

 

 

 

NNTT Young Opera Singers Tomorrow 2017@新国立

  • 2017.11.14 Tuesday
  • 23:12

砂田さんからのお誘いにより、新国のオペラ研修生によるガラコンサートに足を運んだ。

場所は中劇場。思ったより会場まで時間がかかってしまったので、開演の午後7時に間に合わず、場内に入れたのは2曲目からとなってしまったのは想定外だったが、舞台との距離感も近く歌を聴くには最適な場所だ。

 

今回は、第18期〜20期の総勢15人が、全体は前半が〈歌曲の部〉、休憩挟んだ後半が〈重唱の部〉の二部にわたって披露するというもの。そして、砂田さんは2番目の登場だったので、席に座った瞬間から聴くことに。。。

 

印象に残ったのは、贔屓目なしにやはり砂田さんだろう。前半はデラックアの歌曲、後半はメノッティの重唱と、ともに初めて聞く曲だが、歌の魅力を存分に引き出す能力は流石。特にデラックアは彼女のリリコ・レッジェーロを味わうにはいい曲だ。

また、宮地さんの早坂作品は、”尺八の息づかいそのままを思わせる”とプログラムの作品紹介にあったが、まさにその雰囲気を十二分に伝えることに成功。無音の小節では彼女のかすかな声の振動が天井で響いているという不思議な瞬間を体験もできた。

 

それにしてもプロの道は始まったばかり。それぞれの夢に邁進してほしいと願いつつ、会場を後にした。

 

〈データ〉

 

NNTT Young Opera Singers Tomorrow 2017

2017.11.14(火) 19:00

新国立劇場 中劇場

 

 

<歌曲の部>
 1.G.ヴェルディ: "L'esule"(亡命者)伊良波良真  
 2.E.デラックア: "Villanelle"(牧歌)砂田愛梨   
 3.J.ブラームス: "Wenn ich mit Menschen"(たといわたしが、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても)氷見健一郎
 4.H.ヴォルフ: "Die Bekehrte"(心がわりした娘)吉田美咲子  
 5.H.ヴォルフ: "Seemanns Abschied" (船乗りの別れ)高橋正尚    
 6.S.バーバー: "Sure on this shining night", "Sleep now" (この輝ける夜にきっと)(今や眠れ) 十合翔子    
 7..グアスタヴィーノ: "La rosa y el sauce"(薔薇と柳)水野優 
 8.早坂文雄: "うぐひす" 宮地江奈
 9.F.リスト: "Pace non trovo"(平和は見つからず) 荏原孝弥    
10.R.シュトラウス: "Ständchen"(セレナーデ)西尾友香理

<重唱の部>
11.J.マスネ『マノン』より "Toi Vous!"(君!あなたでしたか!)
  平野柚香(マノン)、水野優(デ・グリュー)
12.G.ヴェルディ『リゴレット』より "Mio padre! Dio mia Gilda!"(お父様!ジルダ!) 
  斉藤真歩(ジルダ)、野町知弘(リゴレット)
13.G.ロッシーニ『セビリアの理髪師』より "Don Basilio!" (ドン・バジリオ!) 
  十合翔子(ロジーナ)、高橋正尚(フィガロ)、荏原孝弥(アルマヴィーヴァ)、
  氷見健一郎(バジリオ)、伊良波良真(バルトロ)
14.G.ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』より "Il pallor funesto orrendo"(恐ろしく不吉な青白さが) 
  西尾友香理(ルチア)、野町知弘(エンリーコ)
15.R.シュトラウス『ばらの騎士』より 

   "Wie himmlische, nicht irdische,wie Rosen"(地上のものとは思えぬ天上のばら) 
  吉田美咲子(ゾフィー)、一條翠葉(オクタヴィアン)
16.G.C.メノッティ『電話』より "Hello this is Lucy~"(もしもし、ルーシーよ) 
  砂田愛梨(ルーシー)、高橋正尚(ベン)
17.G.ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』より "Lucia perdona"(許してくれ、ルチア) 
  宮地江奈(ルチア)、濱松孝行(エドガルド)

 

Finale

G.ヴェルディ: 『ファルスタッフ』より "Tutto nel mondo e burla" (世の中全て冗談だ)

 

ピアノ:河原忠之、岩渕慶子、高田絢子

 

【料金】 2,160円

 

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

いらっしゃい!

ブログパーツUL5

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM