Das Rheingold@Theater Duisburg
- 2017.11.24 Friday
- 23:57
飛び石連休という貴重なお休みを利用してドイツの地へ。今回はまず、「ラインの黄金」を聴きにDuisburgまでやってきた。
Duisburg、日本人にはあまりなじみのない街だが、立派なTheaterがあるのは欧州の地方都市ならでは。位置関係はDüsseldorfの北、電車で20分程度だから隣町感覚。そのためかDeutsche Oper am RheinのHPには、Opernhaus DüsseldorfとTheater Duisburgが、あたかもひとつの劇場のように一体的に宣伝(運営?)されているのがおもしろい。
時は折りしも各地で始まったクリスマス市の真っ最中。駅から程近いところにあるメーンストリートは電飾の飾り付けに引き寄せられるように人々が繰り出していたが、その雑踏の中ほどを右に折れた先にTheaterはあった。
内部は収容人数1400名程度の、こざっぱりとした様子。こちらもBayerische Staatsoperと同じく、開演10分程度前にならないと内部に入れなかった。(これがドイツのオペラハウスの常識?)
さて肝心の上演だが、これが想像以上にすばらしかった。
舞台下手には2階を意識した階段を設置。ラインの乙女たちとアルベリヒとの戯れは2階と階下を行き来することで表現した。
また、舞台上には三箇所に円形のソファーを配置。その時々の場面に応じて何人かが一緒に座ったり、ひとり横たわったりと、場面転換せず情景を描写。そのため、観る側は自分なりに様々なことを想像しながら舞台を楽しめたのではないだろうか。
歌手は全員が水準以上といっていい出来栄え。なかでも印象に残ったのはヴォータン役のJames Rutherford。その圧倒的な声量と演技力は、これまでのそう多くはないワーグナー鑑賞歴でもキラ星のごとく輝くものだ。
またオケも素晴らしい。混沌とした中に真実を見出すかのような、冒頭のじわじわと迫りくる音の流れに酔ったかと思うと、突如として厳しく荒々しい音が飛び出す。それも力が入ってのパワー全開ではなく、余裕を持って迫りくる音なので聴いてる者は心地よさしか感じない。起伏溢れる演奏に隙が入る暇はなかった。
今日の演奏、「なぜこれほどに歌手の声が響き、オケが鳴るのか?」と思うことしきり。会場がこじんまりしていることか?ホールの作りか?それもないとはいえないだろう。しかし、作品のへの”こなれ感”から発する部分がかなり大きいのではないだろうか。
たとえば、冒頭のラインの乙女たち。日本で上演する場合、主要キャストは外国から招き、3人だけは日本人に割り当てたりする。また、すべて日本人キャストの場合、3人は若手が担当することが多い。確かに歌う量を考えたら相応の実力がないと勤まらないため、やむえないかもしれない。しかし、そういう場ばかり見ていると、それが当たり前と思ってしまうのが怖い。
今日の3人の乙女たちも比較的若手のかもしれない。しかし、これまでに聴い乙女たちの中で最高の乙女たちの歌いっぷりだった。3人とアルベリヒとで繰り広げられた戯れにこれほどまでに引きこまれたことはなかったし、これこそ作曲者も望んだ姿なのだと感じた。
それもこれも、全員の力を引き出して極上のものに仕上げた Axel Koberの指揮がなせる業だろう。
うれしいことに聴衆も自分と同じ気持ちだったと知ったのは、タクトが下ろされた瞬間から始まった万雷の拍手は後にスタンディング・オヴェーションになったことだ。こちらでも今日のような演奏がそう多くはないことを示している証だろう。
一地方都市の、一オーケストラが平然と?こんな演奏をしてしまうことに、ドイツの、欧州の底力と裾野の広さを改めて感じた次第。
またひとつ、記憶に残る演奏にめぐり合えたことに感謝。
P.S. 字幕付で上演されたが映し出され場所は舞台上辺の中心。だが、そこは構造物の一部である木枠。特別なスクリーン状のものはない。かつ、なぜか字幕がドイツ語。歌になってしまうと歌詞がはっきりわからないため?...わが街の劇場らしいサービス。
チケットは劇場HPから直接購入しているが、チケット入手方法の選択肢にあるのが「home printing」。文字どおり家庭にあるプリンターでチケットを印刷し当日提示するもの。
もちろんHPからの購入でも海外へ郵送してくれるし、劇場のBox Officeでの受け取りも可能fだが、送料負担、硬券の記念品的価値?を考えない、当日あたふたしないことを考慮すれば利用価値大。日本ではあまり見かけないのはなぜだろう?
でも冷静に考えると、チケット転売が問題になっている折、home printingを通り越して、電子チケットや生体認証?にいくのはやむをえないか...
〈data〉
Theater Duisburg
24. 11. 2017 19.30 Uhr
Wagner:Das Rheingold
Vorabend des Bühnenfestspiels „Der Ring des Nibelungen“
Text vom Komponisten
In deutscher Sprache mit Übertiteln
Dauer: ca. 2 ½ Stunden, keine Pause
Empfohlen ab 12 Jahren
Musikalische Leitung: Axel Kober
Wotan: James Rutherford
Donner: David Jerusalem
Froh: Bernhard Berchtold
Loge: Raymond Very
Fricka: Katarzyna Kuncio
Freia: Anna Princeva
Erda: Ramona Zaharia
Alberich: Stefan Heidemann
Mime: Florian Simson
Fasolt: Thorsten Grümbel
Fafner: Lukasz Konieczny / Sami Luttinen
Woglinde: Heidi Elisabeth Meier
Wellgunde: Kimberley Boettger-Soller
Floßhilde: Iryna Vakula
Orchester: Duisburger Philharmoniker
【preis】 EUR 18,10