魔弾の射手@兵庫県立芸術文化センター

  • 2018.07.21 Saturday
  • 22:45

一昨日聴いたばかりの演目がまた聴けるとは思わなかったが、「魔弾の射手」を聴きに西宮まで足を運んだ。

 

場所は兵庫県立芸術文化センター。前から来たいと思っていたが、やっと実現。場所は阪急「西宮北口」駅からペデストリアンデッキで直結されており、雨が降っても大丈夫のアクセスの良さ。

入り口までの回廊には、演目の登り旗がはためいていた。

 

内部の壁はコンクリートの打ちっぱなしだが、層の積み重ね状になっているので、一見木目調に見えなくもない。また、トイレも床は木目と黒石、壁は木目、水回りは木目と煉瓦状の壁と、非常にシックなつくり。

会場内は劇場を意識した四層構造のつくり。舞台の奥行きもかなりとってある様子で、オペラ上演には好都合であろう。

 

さて、肝心の演奏だが、個々のキャストは高いレベルで一体化しており、心地よい。

マックス役のトルステン・ケールやアガーテ役のジェシカ・ミューアヘッドの、伸びのある歌唱は全体をきりりと引き締めて、劇を引っ張ったが、それ以上に印象に残ったのは、日本人歌手の活躍だ。

 

まず、カスパー役の高田さん。いわゆる悪役といえる役どころは、日本人は決して得意とするところではないと思うが、前に伸びる明瞭な歌唱で、その怪しげな悪辣さを好演していた。見どころの一つである、第2幕の魔弾を造るシーンなどはその最たるものだ。

また、エンヒェン役の小林さん。彼女のドイツ語歌唱も明瞭であり、よく響く。特に第2幕や第3幕のアガーテと絡むシーンではその長いアリアを完璧に歌いこなす一方で、語りのドイツ語も台本を暗唱したのではなく、アドリブで語っているかのような自然な感じで、歌と語りが連続して一体化しており、アガーテ以上の活躍。役どころを十二分に理解したその所作もチャーミング。

カーテンコールでも一番拍手が大きかったのも頷ける。

お二人とも外国人歌手に比べて決して大柄ではないが、余裕をもって歌い演じている姿に実力の程がうかがえる。

 

マエストロ佐渡の指揮はもう少し音の喜怒哀楽がほしいところもあったが、手堅くまとめた感のあるもの。これはオケも同様であり、音のうねりや陰影が出ればもっとよかった。今日が初日なので、後半こなれてくれば違ってくるかもだが...

 

ロマン派の時代を開く作品と言われているが、以前からその影響を強く感じると思ってきた作品がベルリオーズの「ファウストの劫罰」。怪しいメフィストフェレス、蚤の歌、地獄落ち等々。怪しげなシーンがある作品は、それだけで魅惑的な光を放っているように感じるが...両作品とも、また劇場で聴いてみたい。

 

P.S. 手渡されたリーフレットの、出演者紹介のページを繰ってトルステン・ケールの記事を見ていたら、「18年2月、ドイツ・ザクセン州立歌劇場で、マックス役で出演」とあった。確かに当ブログの記事を見たら、自分でも書いていた。

出演した歌手を覚えるのはなかなか難しい...

 

 

〈データ〉

 

佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2018

2018.7.20(金) 14:00

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

 

カール・マリア・フォン・ウェーバー:魔弾の射手(全3幕)

 

指揮:佐渡 裕

演出:ミヒャエル・テンメ

 

マックス:トルステン・ケール

アガーテ:ジェシカ・ミューアヘッド

エンヒェン:小林沙羅

カスパー:眦鎮匚

オットカー侯爵:小森輝彦

クーノー:ベルント・ホフマン

隠者:妻屋秀和

キリアン:清水徹太郎

ザミエル:ペーター・ゲスナー

 

管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団

 

【料金】 B席 9,000円

 

 

魔弾の射手@東京文化

  • 2018.07.18 Wednesday
  • 22:47

有名ではあるが上演頻度はそう多くない演目だろう「魔弾の射手」が上演されると聞いたので、上野まで行ってきた。

結構好きなオペラなので期待も込めて。

 

平日のマチネでもあり6割程度の入りだが、それ以上に気になったのは演奏内容だ。

この公演のために尽力されたスタッフやキャストの方には申し訳ないが、最近聴いたオペラの中ではもっとも出来栄えがよくない。

 

まず、音楽全体に勢いがない。

序曲からしても、無難な演奏に終始し、「さてこれから何が始まるのだろう???」との期待感を感じさせてくれない。

また、実力ある若手のキャストが歌唱するドイツ語も切れが全くと言っていいほどないため、発音も明瞭聴こえず、音圧も不十分。音の深みもない。そのため、音楽がうまく流れていない。

 

また演出にも疑問点がある。

第2幕での狼谷で悪魔を呼び出す場面「Eins いーち、Zwei にーい、Drei さーん...」は、音楽もうねり、このオペラ最大の見せ場。

「暗闇の中で行われる不気味さ」がここに漂っている雰囲気であり、見る側一人ひとりがそれぞれに想像を膨らませる、それがここでの魅力のはずだ。

しかし今回の演出では、通常は「暗闇の中」にいる合唱を、団員それぞれにライトを持たせたうえで「明るい場所」に出し、加えて集合体とさせて結果的に明りの光量を増した。それによって音楽の持つ凝縮力が失われ、各人の想像する楽しみと凝縮された音楽から発出される爆発力を奪った。そして集合体の中から現れたのは謎の美女というのだから、何を言わんかである。

また、第3幕も舞台転換のためだろうが、幕間で幕を下したため全体の流れが遮断され、ぶつ切りの印象を与えた。

 

また語りが多くあるオペラでもあり、集客効果を期待してであろう、元宝塚のスターの起用。

さまざまなコラボとチャレンジはいつもの時代でも必要であろうが、今回のような、オーソドックスなオペラ公演での起用が妥当だったのかは疑問だ。

登場するたびにファンから拍手が沸き起こったり、オケの最後の音が終わる前に拍手が始まる様を見たこれまでのオペラファンは何と思うか?

新しい企画はいいが、ボタンを掛け違うと、これまでのファンを失いかねない危うさを感じた。

 

因みに、冒頭の合唱で、日本語字幕のほか英語字幕もあり「あれ???」と思ったが、その後の語りは日本語だったので納得。それはそれでわかりすい対応でありよかったのだが...

それにしても、改めて聴くと心地よいアリアが詰まっている名曲。今年2月にSemperoperで聴いた、引き締まった演奏を思い起こしてしまったが...

 

海外からの頻繁な引っ越し公演、有名歌劇場のライブビューイング、Web環境の家庭で楽しめる海外有名オケのライブ等々、聴衆の耳はひと昔前に比べればかなり肥えているため、中途半端な演奏には魅力を感じなくなっている。

そういう意味では演奏団体にとっては厳しい時代だが、だからこそ自己中心的でなく、聴衆が何を求めているかを把握し続けていくことが益々大事となろう。

 

 

〈データ〉

 

東京二期会オペラ劇場

《ハンブルク州立歌劇場との共同制作》

2018.7.18(水) 14:00

東京文化会館 大ホール

 

カール・マリア・フォン・ウェーバー:魔弾の射手(全3幕)

 

指揮:アレホ・ペレス

演出:ペーター・コンヴィチュニー

 

オットカール侯爵:大沼 徹

クーノー:米谷毅彦

アガーテ:嘉目真木子

エンヒェン:冨平安希子

カスパール:清水宏樹

マックス:片寄純也

隠者:金子 宏

キリアン:石崎秀和

ザミエル:大和悠河

 

管弦楽:読売日本交響楽団

 

【料金】 D席 6,000円

フィデリオ@オペラパレス

  • 2018.05.20 Sunday
  • 23:12

新国立のオペラ芸術監督として最後の指揮であろう、マエストロ飯守による「フィデリオ」に行ってきた。

 

演出はワーグナーの曽孫、カタリーナ・ワーグナー。

舞台は当初二層構造で進む。2階部分が看守部屋、そして1階部分が地下牢。

冒頭、なかなか味のきいた演出。

音楽が鳴り始めると、棚状に配された何もない2階の空間に男女二人が現れ、手際よく緑のカーペットを敷き、バラ?一輪を規則的に配置。そしてその作業が終わるともに、舞台後ろの扉が開き、花園を思わせる彼方からピンク色のドレスを纏ったマルツェリーネが登場。音楽との間もピタリと決まり、彼女の伸びやかな演技もいい。

その後は、薄暗がりの舞台で、時折地下牢の中でフロレスタンの動く姿が見える中、物語は進行していく。

 

第1幕後半の、ピツァロの企みを知ったレオノーレのアリアでは、2階にいるピツァロにライトが当てられ、その影が1階の壁に投影。夫が入るかもしれない穴掘りの手伝いをしているレオノーレが激しい怒りを込めて歌いあげる中で、その影に対してナイフを突き刺す仕草を持ってきた。

その後はゆっくりと舞台装置が上昇したかと思うと、地下2階部分が姿を現し、静寂の中から「囚人たちの合唱」が始まった...

 

印象に残ったソリストに一言。

まず、マルツェリーネを歌った石橋さん。たぶん初めて聴かせていただいたが、その希望に満ちた晴れやかな演技と伸びやかな歌唱はイメージどおり。これまで、フィデリオは何回か見たものの、正直マルツェリーネ役はあまり印象に残っていない。が、今回は違う。経歴を拝見すると中堅どころだと思うが、今後も何らかの役でぜひ聴きたい、清々しい声質の持ち主だ。

ロッコ役の妻屋さんがまた素晴らしかった。これまで何回かはライブで拝見しているが、今日のはその中でもピカイチ。見栄えのする立派な体格から発せられる太い声は、普段以上に響き渡り、演技力も申し分ない。

レオノーレ役のリカルダ・メルベートとフロレスタン役のステファン・グールドのお二人は、期待通りの出来。特にメルベートの、舞台狭しと思えるくらい動き回る演技と、天井を突き抜けるかのような圧唱には脱帽。体格と声量は必ずしも一致しないが、今回は違った。万雷の拍手で称えられた。

 

合唱もいい。「囚人たちの合唱」では、自然な形で弱音から入った合唱が、徐々に人影が露わになるのと比例するかのようにじわじわ広がっていく。しかし、決して爆発するのではなく、ひとりが発する声量は変わらずに人数分だけ増していく感じだ。

 

オケの東響も健闘。もう少しダイナミックさもほしいところもないではなかったが、最後まで安定した演奏を繰り広げたことは称賛に値する。

 

そして、すべてをまとめあげたマエストロ飯守。従来のイメージよりおとなしめの指揮かな?とも感じたが、音楽のつくりそのものはまとめきれていた。マエストロの別な側面を垣間見た指揮ぶりだった。

 

しかし、このオペラ、ストーリー的にはシンプルで決して面白味のあるものではない。しかし、改めて字幕を追ってみると、その一言一言に込められた思いがズシリと心に響く。ベートーヴェンはこのただ一曲しかオペラと言えるものは作曲しなかったが、だからこそ伝えたい思いは、痛いほど伝わってくる。

欧米では「第九」は特別な時にしか演奏されないようだが、たぶんこの曲もそうそう演奏される曲ではないだろう。詩を読んで改めて感じた、さすがに楽聖である。

 

 

〈データ〉

 

新国立劇場 開場20周年記念特別公演

ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」(全2幕 ドイツ語上演日本語字幕付き)

2018.5.20(日) 14:00

新国立劇場オペラパレス

 

指揮:飯守 泰次郎

演出:カタリーナ・ワーグナー

 

ドン・フェルナンド:黒田

ドン・ピツァロ:ミヒャエル・クプファー・ラデツキー

フロレスタン:ステファン・グールド

レオノーレ:リカルダ・メルベート

ロッコ:妻屋 秀和

マルツェリーネ:石橋 栄実

ヤキーノ:鈴木

囚人1:片寄 純也

囚人2:大沼

 

合唱:新国立劇場合唱団

管弦楽:東京交響楽団

 

【料金】 A席 21,600円

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