Leonard Bernstein's Mass@Esplanade

  • 2018.06.02 Saturday
  • 23:35

今年は「バーンスタイン生誕100周年」ということで世界中で記念の演奏会が開かれているであろうが、彼の異色の作品「ミサ」を聴きにシンガポールまでやってきた。

 

事前に仕入れた情報によると、この作品、ラテン語による通常ミサ文に加えて、彼の自作の詩、そして語りなど英語やヘブライ語が交錯し、出演者もオケや合唱のみならず、ロックバンドやストリートコーラス等も演じるという。

詩の内容もある意味問題あるようなので、欧米でもなかなか演奏されないらしい。日本では昨年、約20年ぶりに井上さん指揮で演奏されたらしいが...

 

舞台には所狭しと言わんばかりの150名はいるであろう、オケやギターを抱えた面々。

さて、演奏開始前、舞台上の合唱団席に大人と子どもがいると思ったら、「出演者のために写真撮影などはご遠慮ください」とのアナウンス。そして、演奏は開始された。

 

ソプラノソロとバリトンソロによる、録音された「kyrie eleison」が流れたと思うと、先ほどのアナウンスの主、今日の主役である司祭(celebrant)が歌いだす。ミュージカルなどでよく使うヘッドセットマイクを着けて。

そして、舞台両袖から8人づつに分かれたストリートコーラスと思しき16名のソリストが入り、舞台真ん中でクロス。次は1階客席の両サイドから白い衣装を身にまとった合唱団が舞台へ上がったと思ったら、同じよう舞台正面でクロスし、いったん舞台裏に入った後、2階の合唱団席へ。これで出演者が全て揃った。

 

舞台上の両サイド上の空間には巨大モニターが設置され、英語も含め歌われるすべての言葉が映し出されれる。また、場面場面に応じて映像が流されたり、カメラマンが表れて司祭やストリートコーラスの面々の歌唱をアップで撮影して流したりと使い方も多彩。

 

作品のあらすじはというと、演技やモニターの英語を見た限りでは、祈りを求める司祭だが次第に疑問を感じる人びと、それによってこれまでの常識に疑いを持ち始めた司祭は悩み苦しむが、最後は全員が天使によって癒される、といったところ。

また、A Theatre Piece for Singers,Players and dancersとの副題があるように、シアターとしての上演を前提として作られているため、動きもそれなりにある。劇終盤では、演出だろうが指揮者も含めて全員がスゥングする場面さえある。俗っぽく、曲の印象をひと言で言い表すと、「ミサ典礼文を含んだ、ミュージカル風の音楽劇」とでも言えるだろうか。

 

これまでバーンスタインの作品自体ほとんど聞いたことはなく、この作品も録音を含め初めて接したが、アメリカらしい多種多様な音楽要素が散りばめられ、それがバーンスタインらしいエネルギッシュなポップさを生み出しているのが最大の魅力。それに彼の信仰の深さが加わり、更に作品の魅力を増している感じだ。
 

主役は何といってもcelebrant。これまでの自らの常識が崩壊しかねない時には、だれもが狂わんばかりになるであろう。そんな切迫する姿も含めて、最後まで高度な歌唱と演技をやり切り、作品を牽引したKevin Vortmannは素晴らしいの一言に尽きる。

プログラムの紹介によると、主にブロードウェイで活躍しているらしく、最近ではフィラデルフィア管の演奏で、グラモフォンからこの作品のCDを出したらしい。この作品は彼のレパートリーのひとつなのだろう。今思い出しても、カメラに向かっての迫真の演技はこなれてないと出来るレベルではない。

ストリートコーラスや合唱も思い切り良く溌溂と演じ切っていたのは、作品への共感を感じさせる何よりの証拠。漲る躍動感は演奏の魅力を一層高めた。

 

そして休憩なしの2時間近くを弛緩することなく、全体をまとめ上げた指揮のJoshua Kangming Tanも称賛されてしかるべきだろう。彼は10年前のミトロプーロス国際指揮者コンクールで2位になり、現在はSingapole Symphony Orchestraの副指揮者らしいが、まだまだ若いので伸びしろは十分。今後ますます期待したい。

 

”The mass is ended, Go in peace ”との言葉で締めくくられたこの作品、益々混沌としている現代だからこそ、もっと演奏されるべき作品だろう。CDではなく、バーンスタインらしくライブで作品に触れることが、この作品の魅力を理解するには決して欠かすことができない。(次善として、2012年のPromsでの演奏の様子が you tubeにアップされています)

気が早いが、再来年の2020年はオリンピックだが、バーンスタインの没後30周年でもある。この作品の準備はそれなりの時間がかかる。オリンピックもいいが、是非是非日本で演奏会が開かれないだろうか?期待せずにはいられない。

 

 

 

 

〈Data〉

 

Leonard Bernstein's Mass:A Theatre Piece for Singers,Players and dancers

in Collaboration with Esplanade - Theatres on the Bay

Sat, 02 Jun 2018  7:30 PM

Esplanade Concert Hall

 

Performed by Orchestra of the Music Makers (Singapore)
With
Joshua Kangming Tan, Conductor
Kevin Vortmann, Celebrant
Himig Sanghaya, (Eudenice Palaruan, Vocal Coach)
Symphonia Choralis, (Chong Wai Lun, Chorus Master)
Volare Treble Voices, (Darius Lim, Chorus Master)


Edith Podesta, Director
Brian Gothong Tan, Multimedia Designer

 

【Price】 S$16.00

LA VOIX HUMAINE@Victoria Concert Hall

  • 2018.05.13 Sunday
  • 22:15

プーランクのモノドラマ「人間の声」を聴きにシンガポールまでやってきた。

場所は有名なEsplanade Concert Hallからもほど近い、Victoria Concert Hall。

 

聞くところによると、由緒あるこのホールは4年に渡る改修を経て、2014年にリオープンのコンサートが開催されたとのこと。初めて訪れるが、たしかに歴史を感じさせる建物だ。

 

ホール内は2階席のあるコンサート形式の作りで、周りは古典的なギリシャ・ローマ風の列柱が並んでいる。

舞台上には電話線の巻きついたピアノ。その前には薬やウィスキーが置かれ、ボストンバックからは書類は散乱している。

 

すべての照明が消えて、薄暗がりの中舞台に現れたと思ったのが2人。ひとりはピアノの椅子に座り、ひとりは上手で上手に頭を向けてうつ伏せに。そしてモノドラマが始まった。

舞台上のスクリーンには、出演の2人でドラマを演じた様子がモノクロで映し出されている。また、フランス語での歌唱のため、スクリーンには英訳も。

 

初めて見聞きするドラマの内容はわからずとも、女の複雑な胸のうちを赤裸々に語る、歌手の迫真に迫る演技と歌唱に圧倒された。

ピアニストは相手の男役であり、男への気持ちを抑えきれない女は、伴奏を続けるピアニストの首に自らの左腕を絡ませる。ピアニストに異様な緊張感をもたらした一場面だ。

 

この作品を演じるのはかなりの実力が無ければ無理だが、演じたJennifer Lienは演技、歌唱とも申し分ない出来。作品に見事に入り込んで、主人公と一体となった。

たった45分程度のモノドラマだったが、これほど緊張したのは久しぶりの感。緊張から解き放たれた聴衆からも大きな拍手が沸いた。

日本でも演奏されたことはあるだろうが、今までノーチェック。今度演奏する時は是非とも見てみたい!この作品の本質はCDやビデオではなかなか伝わないだろうから、余計そう思う。

想像もしなかったが、作品の凄さと演奏の両方に感謝したひとときだった。プーランクはやはり面白い。

 

 

 

 

〈Data〉

 

VCH Presents

La Voix Humaine

Vivtoria Concert Hall

Sun, 13 May 2018 4pm

 

Jennifer Lien, soprano

Shane Thio, piano

Ivan Heng, direction

 

Brian Gothong Tan, multimedia design

 

 

【Price】 S$ 31.00

ヴェルレク@サントリーホール

  • 2018.03.07 Wednesday
  • 22:15

武蔵野合唱団のヴェルレクのお誘いを受けたので、久しぶりにサントリーホールに行ってきた。改修後初めだが、なんとなく以前のほうが落ち着いていたのは気のせいか...

 

通常は休憩なしに演奏されるが、プログラムによるとDies Iraeの後に休憩を入れるという。休憩が入るヴェルレクも多分初めて。

そしてコンマスも入りソリストも入ってきたが、バスが妻屋さんでなくて青山さん。???と思っていたらマエストロが「ほんの90分前までは妻屋さんの朗々たる声が出ていたのですが、その後次第にでなくなり...急いで連絡を取り歌っていただけるとOKが出たのが青山さんです」マイクで語りだした。

 

そんなアクシデントもあったようだが演奏は聴きごたえがあった。

 

まず、合唱団。女声110名程度、男声40名程度の人数だが、声量バランスは見た目の人数の差をまったく感じさせないものだった。

冒頭のRequiemに続くDies Iraeは、ヴェルレクに参加した者なら、一番の歌いどころ!と誰もが思い、命を懸けんばかりに前のめりになるが、ここも無謀に暴走せず、抑制のきいた理性的な高揚感が感じ取れたのは秀逸。またsotto voceと指示があるQuantus tremor est futurus...も子音がしっかりと明瞭に飛んでおり、歌いこんだことが伺える。

 

ヴェルレクは大雑把に分けると、Dies Irae までが合唱中心、その後はソリスト中心と言えないこともないため、結果的にDies Iraeの後で休憩を入れるのも悪くはない。

 

一方、ソリストで輝いていたのはアルトの山下さん。たぶんこれまでも聴いたことはあるとは思うが、その中低域から下支えしながら発せられる奥行きのある声質と表現力は、この作品を歌うに最もふさわしいもの。プログラムにはかのバッティストーニ指揮のヴェルレクでも歌っているとの記載もあり、さもありなんの感。山下さんが出演するヴェルレク、また聴きたいと思う。

 

ヴェルレクの最後を飾るLibera me。聴きこんでいる方は、冒頭のソプラノによるsenza misuraと指示されたlibera meに大注目。今日の森さんはどんな表現をするのか楽しみにしていたが...結果はだいぶいただけないもの。素人が言うのもだが、どうしても歌おうとしてしまっている感じがした。次に期待したい。

 

アマチュア合唱団がよくヴェルレクを演奏するが、久しぶりにを聴いてみて、この作品を真に表現するには相当の技量が必要なことを改めて感じた。特に合唱団としてはDies Iraeの表現の仕方とOffertorio以降の曲の中での立ち位置がいつも課題になるような気がする。

 

 

〈データ〉

 

武蔵野合唱団 第50回定期演奏会

2018.3.7(水) 19:00

サントリーホール 大ホール

 

ヴェルディ:レクイエム

 

指揮:小林研一郎

 

ソプラノ:森 摩季

メゾソプラノ:山下 牧子

テノール:西村 悟

バリトン:青山 貴

 

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

 

 

【料金】 S席 6,000円

 

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