ついにその日が来た。エルガーの声楽大作「神の国」への出演!
今を遡ること35年前の1983年5月13日の午後6時30分を廻ったころ、新宿にあった東京厚生年金会館で、ある曲が日本初演された。その曲こそ、エルガーの声楽大作「神の国(The Kingdam)」だ。
誘われて合唱を初めて1年足らずだが、その公演に参加。ただただ必死に演奏することだけに集中していたら本番はあっという間に終わってしまった感だったが、四分音符、二分音符に続く三連符のメロディと”In the Name of Jesus Christ“の歌詞は深く脳裏に刻まれた。
だれでも、自らが演奏に参加した曲となればその曲に対する思い入れは強くなるであろう。いつしか、自分にとって、日本にはなじみのないこの曲への思いは強くなっていった。
「またいつか歌いたい。」
日本初演から約20年経ようとする2002年3月、今回も指揮するマエストロ大友の指揮で再演された。しかしこのときは参加の機会を逃してしまった。その後も大作であるためか、合唱団はもちろんオケのプログラムにも載ることはなかなかなかった。
「もう歌う機会はないのか…」
そんなある時、いつもと同じようになんとなくネットを見ていたら、群響が「神の国」を演奏するにあたり合唱団員を募集しているとの記事を見つけた。「やった!」と思いつつも、毎週高崎まで練習に通えるのか?と考えると心は揺らいだ。
しかし、この機会を逃すと、もう二度と歌えない可能性もあり、物理的に通うのが不可能でもないため、参加することに決めた。
そして約半年、高崎に通い続けて、本番の日を迎えた。35年の時は忘れてしまった記憶を取り戻すと同時に、新たな魅力も発見させてくれた。
自らは十二分に後悔することなく歌えたが、果たして聴いてくださった方はどうであろうか...そんなことを思いつつ、緊張感から解放された安ど感もある。しかし、もはや歌う機会はないであろうとは思いつつ、またしても期待してしまう。
「次はいつ演奏するのか?」と。
〈データ〉
群馬交響楽団 第541回 定期演奏会
2018.9.23(日) 18:45
群馬音楽センター
エルガー:オラトリオ「神の国」
指揮:大友 直人
ソプラノ:嘉目 真木子
メゾソプラノ:坂本 朱
テノール:清水徹太郎
バリトン:原田 圭
合唱:群馬交響楽団合唱団