ラインの黄金@びわ湖ホール

  • 2017.03.04 Saturday
  • 23:17

びわ湖ホールが今年から4年かかがりで「リング」に取り組むというので、先月に続き出かけてきた。

で、その成果...期待していたが、それ以上の素晴らしい仕上がりだった。

 

「リング」といえば、演出家にとって「さて、どんな解釈で仕上げようか」とワクワクすることこの上ない楽しみかもしれない。しかし、観る側にとっては凡庸な演出は飽きてしまうが、かといってあまりな”超演出”は勘弁をと思うことしきりではなかろうか。

また最近の映像技術の進歩で不可能なことはないと思われる中で、技術に頼りすぎるのも見る側の想像力を奪ってしまうような気がする。

 

今回演出のミヒャエル・ハンペはプログラムに寄せた「『ラインの黄金』の演出について」の中で、演出家の心情について、「『ラインの黄金』の不思議で超自然的な場面に、何とか適切な解決策を見つけようと格闘するのは、われわれ『びわ湖』の演出チームが最初でも最後でもない。このことはよくわかっているつもりである。われわれが成功したかどうか、成功したとしてもどの程度か、これは『びわ湖』のお客様方に判断していただかなければならないだろう」と語っている。

 

今回の成功の一翼を担う、演出。一言でいえば、台本を忠実に再現する王道を歩みつつ、物理的に困難な場面は映像技術で補完。それによって超自然現象を現実に手繰り寄せるなど、舞台という限られた空間に多様な空間での出来事を持ち込むことに成功したことにある。

 

・冒頭のラインの乙女は粗い点描画のような映像のなかに乙女が泳いでいると思えば、いつのまにか実物の乙女が現れアルベリヒをあしらっている。

・まさに2、3人分の背丈と恰幅はあろうかというリアルな巨人が現れて歩き、大声を発し、内輪もめし、金塊を運び出す。

・ローゲは大蛇に化けたアルベリヒに絞められそうになったかと思えば、小さな蛙に化けたアルベリヒをいとも容易に捕まえてしまう。

・ついさっきまで語り合っていた神々がヴァルハラにかかる虹を歩いて入場を果たす。

これらは一場面の一例にに過ぎないが、わずかな時間の中で行き来する映像と現実に、聴衆が違和感を感じることなく没入できたことは確かだ。

 

キャストも水準以上の出来。その中でも印象に残ったのは、フライア役の砂川さんとローゲ役の西村さん。

お二人ともワーグナーはどの程度経験があるのかは定かでないが、力強く張りのある、真っ直ぐな声は魅力的。特に砂川さんは前にも書いたが声質が劇的に変わった感。一皮むけた印象大。

 

オケは京響だが大奮闘。2時間半という長丁場ながら途中で弛緩することもなく、音のバランスが崩れることもなく最後まで緊張感を持続していたのは称賛されるべき。

 

しかし最大の功績者はやはりマエストロ沼尻だろう。

一音もぶれない序奏から始まって、次々に音楽が流れていく中でも全く動揺せず、一定のリズムを刻んでいく。抑揚のある場面でも力みすぎず激情的になりすぎない、抑制された盛り上げ方だ。

別の見方をすれば「もっと音のうねりを、音の圧を」と望むのかもしれないが、たぶん、劇の流れを大切にしているのではないだろうか。なんといっても全体のバランスは最高だ。それは終演後のマエストロへの嵐のような称賛が証明している。

 

終演後のオケピットを見ていたら2、3人のオケの方が舞台に並んだソリストに向かって、小さな横断幕なようなものを掲げてエールを送っていた。何が書いてあったか知る由もないが、それほどまでに出演者自身もスリリングだった公演だったに違いない。

一回でも多くのワクワク感を誰もが味わえば、何かが変化してくるだろう。

 

今後のびわ湖「リング」、益々楽しみになってきた。

 

 

〈データ〉

 

 

びわ湖ホールプロデュースオペラ

2017.3.4(土) 14:00

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

 

<ニーベルングの指輪>序夜 ラインの黄金

 

指揮:沼尻 竜典

演出:ミヒャエル・ハンペ

 

ヴォータン:ロッド・ギルフリー

ドンナー:ヴィタリ・ユシュマノフ

フロー:村上 敏明

ローゲ:西村 悟

ファゾルト:デニス・ビシュニャ

ファフナー:斉木 健詞

アルベリヒ:カルステン・メーヴェス

ミーメ:与儀 巧

フリッカ:小山 由美

フラアイ:砂川 涼子

エルダ:竹本 節子

ヴォークリンデ:小川 里美

ヴェルグンデ:小野 和歌子

フロスヒルデ:梅津 貴子

 

管弦楽:京都市交響楽団

 

 

【料金】 13,000円

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