サロメ@東京文化
- 2011.02.23 Wednesday
- 23:39
ついにというか、大隅センセが「サロメ」を演る!という日が来た。「センセのサロメ観たいです」と直訴?してから3年で実現するなんて...
胸ふくらませて会場へ。
舞台は左右と裏の三方を壁で囲み(プログラムに寄れば、第三次世界大戦?の核シェルター・防空壕がイメージされているという)、中央に「最後の晩餐」をモチーフにした食卓のテーブルを置いた、シンプルなもの。衣装も現代風の黒白。照明も蛍光色でかなり明るい。
音楽が始まった...しかし音が飛んでこない。
自分はドイツ語の意味が分かるわけではないが、音楽とともに奏でられたドイツ語の持つ響きはなんとなくわかるつもりだ。しかし、その響きが伝わってこない。歌手が何語を歌っているのかさっぱりわからない。
問題は歌手の発音か?オケとの音のバランスか?あるいは語るように流れる音楽の性格か?...
いづれにしても舞台上で、淡々と劇が進んでいった感が否めない。そこにはこの作品が持つ怪しい魅力から発せられる緊張感を感じることはできなかった。
この傾向はオケにもいえることで、終始安全運転。スリリングな音のうねり・キレは残念ながら無かった。
というわけで、劇と音楽がそれぞれバラバラに演じ演奏しているような感じだ。一体感から醸成される突き抜ける高揚感がない。全員が作品をこなしきれていないようだ。
演出はP・コンヴィチュニー。総じて今回の演出は自分には理解できない演出だった。
舞台上で人間の理性を失った行為を複数回見せる必要があるのか?最大の見せ場であるサロメのヴェールの踊りの解釈はなんなのか?等々
常に新しいものを求めなければ聴衆も飽きてしまう。というより新しい発想で取り組むことが演出家としての宿命でもあるだろう。
でも舞台を見る側の、作品及び作品の生まれた文化的な背景への理解度はバラバラだ。ましてやひとり一人の持つ倫理観まで言ったら百人百様。果たして今日の演出がどれだけの聴衆に受け入れられたのか?
自分は精々半歩先を行くぐらいの演出が好きだ!オペラにショッキングなことは求めていない。
作品を楽しみたいのであって、演出を楽しみにしているわけではないからだ。
残念ながら、最後まで自分の中で楽しめないまま舞台が終わった感じだ。大隅センセの良さもあまり伝わってこなかった。
終演後、大きな拍手と「ブラーヴォ!」があったが、どこがよかったのか具体的に聞いてみたい気分だ。他の聴衆と自分との受け止め方の差があまりにあった演奏会だった。
〈データ〉
東京二期会オペラ劇場
サロメ
2011.2.23(水) 14:00
東京文化会館
サロメ:大隅智佳子
ヘロデ:片寄 純也
ヘロディアス:山下 牧子
ヨカナーン:友清 崇
管弦楽:東京都交響楽団
指揮:シュテファン・ゾルテス
演出:ペーター・コンヴィチュニー
【料金】 C席 8,000円