戦レク@東京文化
- 2013.06.18 Tuesday
- 23:32
そんな気持ちで心待ちにしていた演奏会が、通称「戦レク」と呼ばれている、ブリテンの大作「戦争レクイエム」。
一昔前なら、大作と呼ばれるものは10年に1回ぐらいあるかどうか?の演奏頻度。しかし戦争レクイエムもここ10年でみても3回程度は演奏されているような気がする。そんな機会を何度となく聞き逃してきたので、思いも格別。
requiem_ requiem_requiem aeternam...
何者かに呼びかけるような合唱が始まった。それは安息を願うというより、恐怖に怯え、告発するかのようなささやき。精神が解き放たれるどころか、緊張を強いられる雰囲気だ。
久しぶりに聞いて気が付いたことがある。ヴェルディのレクイエムとの共通点だ。
まず、ソロも合唱も、ただ、美声であるいはffで歌っただけでは曲を再現したことにはならない。曲ならではの声の色が必須。歌うのではなく”語るように歌う”ことも求められる。
また、室内楽的な響きも大事だ。編成が大きくなればなるほど、見た目聴いた目?の印象が先行しがち。でも本質はその対極にある。
これらのことをどこまで実現できたかで演奏の質が決まる。
さて、演奏はどうだったか。
ソロはいま一歩の出来。オーウェンの詩の部分は切れ味鋭い、ズバッとした語りが圧倒的に足りない。場面によってはオケに埋没した箇所も。その分、オケとの緊張感をもったやり取りも感じられなかった。ソプラノも美声より語りに重きを置いた歌い方がほしいところ。
合唱は健闘したが、欲を言えばもっと大胆なダイナミックさ、強弱や陰陽がほしい。
大野さんの指揮も手堅くまとめた感があるが、もっと大胆な指揮でもよかったような気がする。それが各奏者の演奏ぶりにも出たのかもしれない。
しかし、演奏会も時代を映す鏡の一枚。
世界的にも不安定な時代。日中韓のソリストを招き、ブリテンのメッセージ性を持った音楽を一人でも多くの市民に伝えられた意義は大きい。そしてこの20世紀の傑作はこれからも絶えず演奏され続けなければならない。
秋には札響がこの傑作を演奏するという。年2回も聞ける!と思ったら、今年は生誕200年のヴェルディやワーグナーに注目が集まっているが、ブリテンも生誕100年。時は巡る。
〈データ〉
東京都交響楽団 第753回 定期演奏会Aシリーズ
2013.6.18(火) 19:00
東京文化会館
ブリテン:戦争レクイエム
指揮:大野 和士
ソプラノ:リー・シューイン
テノール:オリヴァー・クック
バリトン:福島 明也
合唱:晋友会合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
【料金】 A席 7,500円