スウェーデン放送合唱団@オペラシティ

  • 2015.10.20 Tuesday
  • 22:48
世界レベルの合唱とはどんなものなのか、自分の耳で確かめる機会が訪れた。誰もがその実力を認める「スウェーデン放送合唱団」である。

演奏曲目を全部聞いたことがある人はいないだろうと断言できるくらいのシブいプログラム。なぜ、これらの曲目を選んだのか知る由もないが、今回の来日が単なる営業ではなく「自らの実力を直接聴衆に示すには最善と考えた選曲」と考えてもいい。それだけでも自信のほどが伺える。

個々の曲の感想を言えるほどの立場にはないため、ひとりの合唱あるいは音楽愛好家として全体の感想をつづりたい。

よく声楽を愛する人は「ひとり一人が楽器」というが、今日の演奏では正真正銘「ひとり一人が楽器」であり、その集合体として「声楽アンサンブルとはこういうものだ!」ということを示してくれた最高のお手本だった。

もっとも印象に残ったのは、pppからffまでそれぞれの段階の音圧が一定であり、最後の一音に至るまで音が減衰しないことだ。それに伴う豊かな響きも揺るがず、音の濁りも微塵も感じられない。合唱をかじったことがある人なら体験的にわかることだが、これはまったくもってunbelievableな世界であり、まさに驚異的というしかない。
特に、あえて言うならPPPからmfぐらいのハーモニーは絶品で、その部分にこそアンサンブルとしての実力、巧拙が出やすいとも言える。プログラム全体を俯瞰して眺め、息を十二分にわがものとして味方につけなければできることではない。
また、「ひとり一人が楽器」という視点を少し広げて考えれば、訓練によって「声によるオーケストラ」ができ「声による表現」が無限に広がっていく可能性があることを改めて見せてくれた。

今日のアカペラによるとてつもない演奏を聴いたことで、多くの方が「声」の魅力を感じたに違いない。それは満員の聴衆からの惜しみない拍手の嵐が、オーケストラの場合とは明らかに違う”色”のものだったことからうかがい知ることができる。人間の持っている、原始的な”生”からくるもののような気がしてならないのは自分だけだろうか。。。

なお、個人的にはペルトの「トリオディオン」が合唱団の実力を知る上では最高の曲だった。


〈データ〉

スウェーデン放送合唱団
2015.10.20(火) 19:00
東京オペラシティコンサートホール

首席指揮者:ペーター・ダイクストラ

J.S.バッハ:モテット《主にむかいて新しき歌をうたえ》BWV225 
ペルト:トリオディオン(1998) 
シェーンベルク:地には平和を op.13 
ブラームス:祝辞と格言 op.109 
マルタン:二重合唱のためのミサ曲

【料金】 B席 3,000円

第九@ミューザ川崎

  • 2015.10.04 Sunday
  • 22:35
8月にシティの「第九」を歌ったミューザで、また「第九」を演奏する機会があった。折に触れて参加させていただいている「一音入魂合唱団」の一員として。

オケは「Liberal Ensemble Orchestra」。大学OB主体となって創設したアマオケとのこと。定期は3回目とのことだが、合奏力はなかなかのもの。

第九はこれまで何回とやってきたが、何回やっても難しさは変わらない。そして変わらないのはその高揚感も同じだ。
今回も客席を埋めたみなさんから大きな拍手をいただいた。


〈データ〉

Liberal Ensemble Orchestra 第3回演奏会
2015.10.4(日) 14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:曽我大介

ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

ソプラノ:浪川 佳代
アルト:高野 百合絵
テノール:豊原 奏
バス:吉川 健一

合唱:一音入魂合唱団
 

ラインの黄金@オペラパレス

  • 2015.10.01 Thursday
  • 23:14
いよいよ始動した、芸術監督自らの指揮による「リング」。その初日に行ってきた。

何より印象的だったので、終始「生きている音楽」が流れていたことだ。
マエストロの卓越した洞察力は劇をグイグイ引っ張り、紡ぎ出され醸し出される音は見事なまでに言葉とシンクロしながら、その細部まで描写していく。字幕を見ながら「音楽が言葉を表現している」ことに「そうか、そうか」と何度頷いたか。。。
音が素直に体にしみこんでいく感じがなんとも心地いい。音楽が言葉を離れて独り歩きしているのではなく、寄り添うように歩んでいるといってもいいだろうか。

この大曲、そんなには聴きこんでないので歌手の出来不出来の言及は避けたい。ただ、海外キャストはとにかく演技が上手いという印象は強く持った。第三場のアルベリヒが権力に酔いしれる場面などはその最たるもの。
見るほうも当然期待値はある。欲望や嫉妬など人間の持つ様々な面が、その期待値をはるかに超える表現がされてこそ見る者の共感が得られるのではないだろうか。

今回のプロダクションは1996年フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の制作によるとのことだが、「リング」の場合はシンプルなのがいいい。個人的には違和感なく、好意的にとらえることができた。
些細なことだが、ファフナーに殺されたファーゾルトが最後まで舞台上に突っ伏していたのはどうかな?と最初思った。単純に考えれば、殺られた勢いでなだれ込むよう舞台袖に姿を消してもいいのでは?と。しかし、最後まで見ると、舞台のバランスを考えて残したのかな?とも思った。ヴァルハラに入場する神々が正面右上、その対角線上の左下にいるのが突っ伏しているファーゾルト。さて、どうなんでしょう???

東フィルも最後まで緊張感を失わず安定感ある音を出していたのは流石。ただ、音の分厚さを求めるとやや不満も残る。もしやこれはこの会場がもつ構造にでもよるのだろうか?何回か聴いているが、このホールには豊饒な響きが足りないような気がしてならない。仮に東京文化会館で演奏したらどうなんだろうか?と考えてしまう。

いづれにしても物語は始まったばかり。マエストロには健康への十分な留意をお願いし、引き続きワーグナーを聴く喜びを味わわせていただきたい。


〈データ〉

楽劇「ニーベルングの指環」序夜『ラインの黄金』 全1幕
2015.10.1(木) 19:00
新国立劇場 オペラパレス

指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ

ヴォータン:ユッカ・ラジライネン
ドンナー:黒田博
フロー:片寄純也
ローゲ:ステファン・グールド
ファーゾルト:妻屋秀和
ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
ミーメ:アンドレアス・コンラッド
フリッカ:シモーネ・シュレーダー
フライア:安藤赴美子
エルダ:クリスタ・マイヤー
ヴォークリンデ:増田のり子
ヴェルグンデ:池田香織
フロスヒルデ:清水華澄

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【料金】B席 15,120円
 

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