都響@Wiener Konzerthaus

  • 2015.11.23 Monday
  • 23:51
ウィーン第三夜。いよいよ海外で初めて日本のオケを聞くことになる。残念ながら都響とは縁がないが、なにか落ち着かないのはやはり日本人だからだろう。

まずは、ドビュッシーの「海」。大好きな曲のひとつだ。一曲目の「海の夜明けから真昼まで」の入りや演奏内容はよかった、眼を閉じると表題の光景が浮かんでくる。しかし、二曲目の「波の戯れ」、三曲目の「風と海との対話」ではパート間での音のバランスが微妙にズレル状況が生じてしまった。それによって、楽曲のそのものの一体感が失われてしまったのは残念だ。一曲目で気合が入ったのはいいが、少し力みすぎて空回りした感がある。

プロコフィエフはどうか。初めて聴く曲だったが、これはレーピンの独り舞台。オケもしっかりサポートしていたが、一言言えばより切れ味鋭い響きがほしかったところ。

チャイコの4番。2曲目でサポートにまわり力みも抜けたのか、今日の曲目の中ではもっとも成功した曲。メランコリックなフレーズの、なんとしなやかでやさしい響きがしたことか。よく聴くと細かいミスが数箇所散見されたり、金管陣はもう少しやさしい響きでもよかったかもしれないとは思うが、それを補ってあまりある力演だった。

異国に来て自らの演奏が一定の評価を受けることは大変な喜びに違いない。自分も聴衆の立場を離れてオケ側の立場に立てば、まずはほっと一息、胸をなでおろしたであろう。
今日の演奏で欧州ツアーは終了のようだが、今後も益々の精進を期待したい。
都響および関係者の皆様、お疲れ様でした。

私もあっという間のウィーン滞在を終えて、明日は帰国の途。


〈デ−タ〉

Sonntag,23. November 2015 ,19.30 Uhr
Wiener Konzerthaus , Großer Saal

Claude Debussy: La Mer.Drei symphonische Skizzen
Sergej Prokofjew: Konzert  fur Violine und Orchester Nr 2 g-moll op.63
Peter Iljitsch Tschaikowsky: Symphonie Nr.4 f-moll op.36

Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
Vadim Repin: Violine

Kazushi Ono: Dirigent

【Preis】 EUR 34.00


 

Szenen aus Goethes Faust@Wiener Konzerthaus

  • 2015.11.22 Sunday
  • 23:16

ウィーン第二夜。今日はKonzerthausで、日本でも馴染みのD.ハーディング指揮でシューマンの声楽大曲「ゲーテのファウストからの情景」を聴いた。

「シューマンの合唱曲?」といってもピント来ない方が普通であろう。それほどに日本では馴染みはないが、聴くと「シューマン節」が随所に聞かれる。
この作品、これまで日本で演奏されてことがあるのか不明だが、今後もほとんどないに等しいだろう。この地でもそう多くはないのでは?と考えると極めて貴重な機会である。

今日の主役はファウストなど3役を歌った、ゲルハーヘルだろう。言葉一つひとつを大切に情感を持って歌いきる歌唱ぶりは、地味ではあるがドイツ語作品においては一頭地を抜いている。
切れ味鋭い響きを聞かせた80人ほどの合唱も称えられるべき結果だった。オペラハウスの合唱がこんなにも美しい響きを聞かせてくれるとは...女性合唱のppでは天井から音が降り注がれるさまである。また、児童合唱も負けず劣らす天使の声を響かせていた。

初めて入った会場は、いわゆる神殿の列柱が客席を取り囲むようにずらりと配置されているような構造。天井も高く、まさに箱の中に最良の空間を作っている感じ。その為か、音がよく響き、特に歌手陣の一音一音の核までが鮮やかに聴こえるのには驚いた。
ウィーンまで来て聴いた甲斐のある、満足のいく演奏会だった。
ただ、気になることがひとつ。これはクラシック界の世界的な課題かもしれないが、聴衆の年齢層が高いことだ。満員に近い会場だったが若者と呼べる聴衆が1割もいただろうか???若手演奏家は次々出てきても、聴衆も徐々に変わっていかないとこの先がおぼつかない。

シューマンには他の声楽大曲で「楽園とペリ」というオラトリオがある。こちらのほうは数年前、年一回行われる、芸大の「フィルハーモニア・合唱定期」で演目として取り上げられたが、今日の作品より更にドラマチックな佳品である。こちらも是非是非再度聴いてみたいが、いつのことになるのやら。。。

P.S 終演後、歩いて宿泊先のホテルに戻り、エレベーターで一緒になった紳士二人のうち一人から声をかけられた。「今のコンサートに行ったんですか?」。プログラムを持っていたのでそう思ったのだろう。「よかったですね。音が芯まで聞こえる感じですよね。ホールがいいんですかね」と自分。「オケがいいんですよ。そうじゃないとあんなに響かない。」
「ウィーンへはいつから?」との質問に、予想もしなかった答えが返ってきた「明日あそこで演奏するんです。都響の演奏会で」心の中で「あっ...」と叫びながらも、「私、行きますのでがんばってください」と言い残して、お互いの部屋に戻った。
旅はおもしろい。


〈データ〉

Sonntag,22. November 2015 ,19.30 Uhr
Wiener Konzerthaus , Großer Saal

Schumann: Szenen aus Goethes Faust

Wiener Symphoniker,Wiener Singakademie,
Opernschule der Wiener Staatsoper,

Christian Gerhaher (Bariton)・・・Faust, Pater Seraphicus, Dr.Marianus
Christiane Karg (Sopran)・・・Gretchen, Una Poenitentium
Alastair Miles (Bass) ・・・Mephistopheles, Bouser Geist

Christina Landshamer (Sopran)・・・Marthe, Sorge, Magna Peccatrix
Gerhild Romberger (Mezzosopran)・・・Mangel, Maria Aegyptica
Jennifer Johnston (
Mezzosopran)・・・Noth, Mulier Samaritana, Mater Gloriosa
Andrew Staples (Tenor)・・・Ariel, Pater Exstaticus
Franz-Josef Selig (Bass)・・・Pater profundus

Daniel Harding: Dirigent

【Preis】 EUR 36.00


 

ウィーン雑感

  • 2015.11.22 Sunday
  • 22:12
21日(土曜日)からウィーンに来ている。約10年ぶりの訪問だろうか。

しばらく遠出の海外旅行はしていなかったが、夏ごろからふつふつと「ウィーンに行きたい!」モードが高まっていた。というのも、初めて海外旅行をしたのが今から25年前の1990年であり、最初に降り立った地が他ならぬウィーンだからである。そう、今年は個人的には海外旅行25周年にあたり、それだけウィーンに対する思い入れも深い。

1990年9月、この地は晩秋と言ってもいい気候だった。街を歩きながら次から次へと繰り広げられる石造りの建造物の存在感に圧倒されているうち、ふと目がある一点を凝視していた。
北の地らしく、濃紺の抜けるような青空と、やさしい太陽に照らされた白い雲が淡い黄色身を帯びている様がウィーン市庁舎の彼方に広がっていたのである。それまで見たことのないそのコントラストの素晴らしさは今でも鮮明に覚えている。

ネットで調べると、ここ何日かのこの地の気温は高めで、時に東京より高い最高気温を記録した日もあったようだ。最低気温でも5,6度であり「もしかしたら意外に寒くない」のかもと思ったりもした。しかし、今日22日は最高気温でも5,6度で、街を歩いていても「芯から冷える」本来の寒さに戻った感がある。

これまでの訪問で「ツアーでは外せない場所」はほとんど行ってしまったので、今回は初めて行く場所を探した。その場所とは「軍事史博物館」(Heeresgeschichtliches Museum)。
ここには16世紀から20世紀初頭までの、ハアプスブルク家の戦いの歴史といってもいいほどの、武器や武具などが展示が展示されているが、その中に気になる一枚の図があった。それは欧州全図に、「○○の戦い」の印である剣を交える印が描かれていうものである。
その数は優に30は超えていただろうか。「なんと多くの戦いがなされてきたことか...」。ハプスブルク家に限った話ではないが、時や時代を超えて、人間の欲望は尽きることがない。その結果の一つとして戦いが起こっているし、その状況は現在でも変わらない。

1週間前の演奏会のプレトークで、マエストロ曽我が「音楽も時代を映しています。音楽を通じて時代の状況を知り、今に通じるものを感じてほしい」と話していたことを思い出した。その時の曲は「1812」「ウェリントンの勝利」「交響曲第三番”英雄”」だったが、どんな曲でも「作られた時にどういう時代や状況だったのか」を知ることは音楽の理解度の深化に大きく貢献するだろう。

展示品の中には、かの「ラデツキー将軍」の肖像画もあった。歴史を紐解けば、ヨハン・シュトラウスの数多のワルツも違った響きがしてきそうだ。

こちらに来て「euronews」というTVを見ているが、パリでの事件以降の欧州各地の動きが連日報道されている。
「maximum alert extended」という表現の厳戒態勢下で、地下鉄も止まり、人影まばらなブリュッセル。コロッセオを背景に警察が警戒態勢をしくローマ。一方で、マケドニアのある都市の国境付近?での難民と警察との鬩ぎあい。
いつになったらすべての人々に安寧の日々が訪れるのだろうか...

第一次大戦時の大砲や砲弾によって天井に穴があいた堡塁など、普段の見聞きする映像だけでは伝わらないリアル感もあり、「軍事史博物館」を訪れたことは、思いがけず、さまざまなことを考えるきっかけを与えてくれたみたいだ。
 

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