アレクサンドル・ネフスキー@ザ・シンフォニーホール

  • 2016.10.29 Saturday
  • 20:51

プロコフィエフの代表的な声楽曲、「アレクサンドル・ネフスキー」を聴きに大阪まで出かけてきた。ご存知のとおり、この曲はもともとエイゼンシュテイン監督の同名の映画で彼が曲をつけたもの。しかし、作品としてのこの曲は、単なる映画音楽の組曲ではなく、構成も管弦楽法も変更した”別作品”として完成させたとのこと。

 

またこの曲、意外と?演奏されており、ここ5年間でも年一回はどこかで演奏されているのでは?という頻度感覚。

個人的には曲があることは随分前から知っていたが、全曲聴くのはCDでも生でも初めて。うかつであったかも...

 

とにもかくにも聴き終わった印象は...

曲としては、丁寧に字幕もついて歌詞はわかり1曲1曲は印象的な部分もあるが、全7曲のつながりがよくわからない。しかし、そこは熱い指揮とそれに食いついていこうとする楽団員の姿勢が曲全般に満ちていたことで満足。5曲目のオケ部分などは最たるもの。

合唱も健闘はしているが、やや自発性が感じられず、曲や指揮者に歌わされている感があった。またロシア語の発音が不明瞭で言葉が立っていないためffでも平板に聴こえてしまった。140人ほどの合唱なら、ロシアの大地を思い起こさせる押し出しが出来たことを考えると残念。

 

今回はじめて聞いたので、この作品の魅力はよくわからない。しかし、なぜ演奏頻度がそこそこあるのだろう?...

適度な演奏時間(40分程度)と打楽器が多用されて演奏会が華やかになること???そんな単純なことでもないとは思うが...

 

彼の声楽曲なら、個人的には「イワン雷帝」が一番のお気に入り!これもエイゼンシュテインの映画音楽が元で、こっちは確か映画音楽そのものを再構成した作品(何回映画そのものを見たことか...)しかし、ナレーションをつけて物語の展開がわかるようにすれば、面白いことこの上ない。演奏時間も1時間ほどだ。是非是非もっと取り上げてほしい。

正直に言うとこの曲、今から30年以上前に自分が合唱デビユーした曲なので思い入れもひとしおなのだ。

 

 

〈データ〉

 

日本センチュリー交響楽団 第212回 定期演奏会

2016.10.29(土) 14:00

ザ・シンフォニーホール

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番

プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー

 

指揮:アラン・ブリバエフ

ピアノ:エフゲニー・スドビン

メゾ・ソプラノ:小山 由美

合唱:大阪センチュリー合唱団、大阪音楽大学合唱団

 

【料金】 C席 3,500円

 

 

 

ドン・パスクワーレ@びわ湖ホール

  • 2016.10.23 Sunday
  • 21:32

ドニゼッティと言えば、日本では「ルチア」か「愛の妙薬」しか上演されてないような気がする中、沼尻さんが滅多に上演されない「ドン・パスクワーレ」を振るというので、びわ湖ホールに出かけてきた。

さて結果は???大健闘だった。

 

浅薄な知識しか持ち合わせていないこともあるし、先入観や固定観念がそう思わせるかわからないが、日本人がドニゼッティやロッシーニなどの喜劇をやるのは不得手だろうと感じていた。それが今日の演奏を聴いて、少しは払拭された感がある。成功はキャストに恵まれたことが第一だろう。

 

いずれのキャストも光っていたが、印象的だったのは砂川さん。出演するオペラを生で見たのは初めてかもしれないが、出色の出来。これまで砂川さんに対しては「美声だが線が細いかな...」との印象があった。しかし、今日は存在感抜群。演技もいいが、声が太く、伸びやかになっている。”Quel Guardo Il Cavaliere”なんて、ノリーナそのもの。

須藤さんも以前聴いた印象では、声のささえが不十分のような気がしたが、これが堂々たるものに。

ベテランの牧野さん。最初こそ音楽に乗り切れてないかな?と思われるところもあり、第1幕の聞かせどころ ”Un foco insolito mi sento adosso" もワクワク感・躍動感がいまひとつ。しかし次第に乗ってきて、演技でもその存在感大だった。

 

シラグーザはある意味別格。あのキラキラする伸びやかな声は天性のものとしか思えず、日本人がマネしようと思っても努力でできるものではない。舞台裏から聞こえてきた "Com' e gentil la notte a mezzo april!" の軽やかさ、華やかさはなんといって表現したらいいのだろう。出身がシチリアのメッシーナというからさもありなんといったところか。彼が悲しい歌を歌ってもそうは聞えないからある意味損かもしれないが...

 

ドニゼッティの作品では、時として合唱もポイントになるが、びわ湖ホール声楽アンサンブルと藤原歌劇団合唱部による”Che interminabile andirivieni” は文句のつけようのないアンサンブル。素晴らしい!

 

指揮の沼尻さん、丁寧に、大事に作品を仕上げたが、印象としてはやや慎重だった感じ。その分作品が持つ、ちょっとした”間”や”ゆらぎ感”がなくなってしまったのは残念。次回はさらに期待したい。

 

初めてこのホールに来たが、その響の素晴らしさに感動。歌手の声がすぐ目前で歌っているように聞こえるのは自分の錯覚か???そして言葉もくっきり聞こえる。果たして他のホールもこんなに聴こえただろうか?と考えてしまったほどだ。

そんな素敵なホールで、来春にはこれまた上演のレアな「連隊の娘」、そして沼尻さんによる4年がかりの「リング」が始まるという。今後も「びわ湖」から目が離せない。

 

 

〈データ〉

 

 

沼尻竜典オペラセレクション ドン・パスクワーレ

2016.10.23(日) 14:00

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

 

 

ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」

 

指揮:沼尻 竜典

ドン・パスクワーレ(バリトン):牧野 正人

マラテスタ(バリトン):須藤 信吾

エルネスト(テノール):アントニーノ・シラグーザ

ノリーナ(ソプラノ):砂川 涼子

公証人:柴山 秀明

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部

管弦楽:日本センチュリー交響楽団

 

【料金】 B席 11,000円

 

 

 

 

 

ドヴォスタ@トリフォニー

  • 2016.10.21 Friday
  • 10:45

お気に入りの曲でもあるドボルジャークの「スターバト・マーテル」の演奏会に出かけてきた。演奏は新日フィル、合唱は栗友会、指揮はハルトムート・ヘンヒェン。秀演が期待できる顔ぞろいだったが...

総じて言うと満足感より物足りなさが残るものだった。

 

一言で言うと、全体として音楽が冷めている印象。

「なぜ、この曲を定期で演奏するか」という意気込みがオケから伝わってこない。10曲から構成されるが、曲同士の連なり感が見えず、1曲演奏終了するといったん切れて、また次の曲に...という全く独立した曲を10曲聴いたような感じになってしまった。そのせいでもなかろうが、ソリストも低調。

1曲目、合唱のアンサンブルを受けてテノールが「Stabat Mater...」と引き継ぐ箇所は伸びやかな声で歌う個所であろうが凡庸な歌唱のため印象に残らず。また、ソプラノも全般的に声がうわずっている印象で不安定。アルトもバスも発音が明瞭でなくこもる感じに聴こえた。いつもはこんな感じではないはずだが...

 

この曲、演奏者を活かすような作りになっていて、合唱単体はもちろんのこと、四重唱と合唱、バス独唱と合唱、テノール独唱と合唱、アルト独唱と合唱、と全員に見せ場を作っている。ならば余計に、曲が融合し、有機的に聴こえるように、声質が同じソリストを揃えるなどしないと曲が生きてこない。結果的には今回はそれも感じられなかった。

 

そんな物足りなさの中、子音の飛びが少なかったとはいえ、最近の栗友会の演奏を聴いた中ではベストと思えるくらい、合唱が光っていたことが救いだった。80人ほどで臨んだ合唱団、1曲目テノールの「Stabat Mater...」の柔らかい響きで入り、それにつづくアンサンブルは色、つやとも絶妙。その一貫したスタイルは独唱が入っても揺るぎもせず、最後まで持続。10曲目で完全燃焼した感。

聴きどころの「Quando corpus morietur, Fac, ut animae denetur Paradisi gloria」、ヘンヒェンはそれまでのAllegro moltoからやや速度を落とし、合唱をたっぷり聴かせるスタイル。もちろんそれもありだろうが、個人的な好みとしては、それまでの速度を保ったまま突入し駆け抜けていったほうがより印象的な感じがするのだが...

 

曲に対する思い入れの差。約3週間前、愛知セントラル響の忘れがたい秀演の余韻が残る中で聴いて感じたことである。

 

 

〈データ〉

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 第563回 定期演奏会

2016.10.21(金) 19:00

すみだトリフォニーホール

 

ドヴォルジャーク:スターバト・マーテル

 

指揮:ハルトムート・ヘンヒェン

ソプラノ:松田 奈緒美

アルト:池田 香織

テノール:松原 友

バス:久保 和範

合唱:栗友会合唱団

 

【料金】 4,000円

 

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