ローエングリン@東京文化会館

  • 2018.02.22 Thursday
  • 23:33

都民芸術フェスティバル参加公演でもある、二期会の「ローエングリン」を見るため東京文化会館に行ってきた。残念ながらカゼ気味で体調はよくなかったが。

 

結論を言えば、残念ながら「うーん...」という感じだろうか。聴き終わった時、なぜかオペラが持つ喜怒哀楽の表情が伝わってこなかったのは非常に惜しい。

それは第一幕から感じたことだった。壮麗な前奏曲に続いて舞台は進行していくが、なかなか熱気を帯びない。最後の決闘によってなんとか盛り上がったが...それは第三幕まで尾を引いたような気がする。


冷静に考えると、一つは全体的にドイツ語が明瞭に飛んでこなかったため、歌唱の響きが上ずったものにしか聴こえなかったことがある。オケの音ばかりが大きく聴こえるような場面もしばしば。また、特に主役のエルザやローエングリンに突き抜ける音の響きがなかったことが大きい。

 

そんな中で一人気を吐いた感があるのが、第二幕を引っ張った、オルトルートを演じた清水華澄さんだろう。彼女から爆発的で突き抜ける音が発せられたとたん、場の雰囲気ががらりと変わり、劇がより劇的なものに変容した。

 

オケは並々ならぬ力演だったと言っていいだろう。都響からこれほど響きのある、引き締まった音を聴けるとは失礼ながら思わなかった。また場面場面での音のメリハリもよかった。

前奏曲は壮麗に、決闘の場面は猛々しく、第二幕は悪事渦巻き、第三幕への前奏曲は華やかに、婚礼の合唱は清楚で厳粛、大好きなハインリヒ王を迎える間奏曲は神々しく...

 

そして、オケからそんな音を引き出したのが準・メルクル。全体を眺めたバランス感覚はさすがにうまい。しかし、オケと歌が完全にシンクロで、流れ続けていたかというと難しい。これも、Semperoperを見た直後からかもしれない。

 

 

〈データ〉

 

東京二期会オペラ劇場

2018.2.22(木) 14:00

東京文化会館

 

リヒャルト・ワーグナー:ローエングリン

 

指揮:準・メルクル

 

ハインリヒ・デア・フォーグラー:金子 宏

ローエングリン:小原啓楼

エルザ・フォン・ブラバント:木下美穂子

フリードリヒ・フォン・テルラムント:小森輝彦

オルトルート:清水華澄

王の伝令:加賀清孝

4人のブラバントの貴族:菅野 敦、櫻井 淳、湯澤直幹、金子慧一

ローエングリン(青年時代):丸山敦史

 

合唱:二期会合唱団

管弦楽:東京都交響楽団

 

【料金】 D席 5,000円

 

Der Freischutz@Semperoper Dresden

  • 2018.02.12 Monday
  • 23:12

第2日目は「魔弾の射手」

 

ドイツロマン派の記念碑的作品と言われる割には、今では全曲聴ける機会は多くはない。ただ、Semperoperとは縁が深い。

というのも、約100年前の1817年、作曲者のウェーバーはここの指揮者になった。また、個人的にはクライバーのCD(1973年録音)はよく聴いたが、彼の振ったオケがここのオケだった。

 

まず序曲。暗い森を思わせる低弦がうなる。そして象徴的なホルンの響き。ああ、これがSemperoperの響きかと勝手に思ってしまったほどうっとり。

それに続く第一幕の開幕の華やかな”Viktoria! Viktoria”の合唱、マックスの甘い”Durch die Wälder,durch die Auen"、カスパールの不気味に陽気な”Hier im ird'schen Jammertal"(これなどは、ベルリオーズ「ファウストの劫罰」のメフィストフェレスのアリアに通じるものがある)などなど、旧友に会ったかのような感慨に浸りながら聞き入った。

続くどの曲も良く練られて書かれたようで、豊かな旋律が続く。さすがはロマン派を切り開く端緒になった曲だと改めて感銘。

しかし、問題が一つ。

 

伝統的なジングシュピールの形式をとっているため、当然ながら会話が挿入されている。その内容は劇進行に必要であるにもかかわらず、残念ながらドイツ語が分からない悲しさ...あらすじを知っていれば音楽だけでも十分楽しめるが、会場内で笑いがあるところで笑えないのはつらい。

 

前日の”オランダ人”同様、この曲も合唱が大活躍の曲だ。冒頭の曲ももちろんだが、第二幕の不気味な”精霊たちの合唱”、そしてもっとも有名な第三幕の”狩人の合唱”など、随所に合唱が散りばめられているのがたまらないし、そのアンサンブルも申し分ない!

(ただ、”狩人の合唱”は演出かどうかわからないが、合唱団員の中のひとりも指揮。それが原因かどうかわからないが、2回とも最後のTralalalalaで合唱が0.5秒?ほど走ってしまったのは勢いがつきすぎた、ご愛敬か???)

 

2日間聴いてみて、いわゆる”ドイツ的なるもの”が残っているとすれば、ウィーンやミュンヘン、そしてベルリンではなく、このドレスデンではないだろうかという気がしてきた。

それは単にinternationalが他の都市に比べては進んでいないというだけであり、街を歩いてもどこかゆったりとした時間が流れているという感じがするというだけの話だが...

 

古都ドレスデン。また来たい街である。

 

 

 

 

〈Data〉

 

 

Der Freischutz

Semperoper Dresden

19:00 Uhr Montag 12.02.2018

 

Musikalische Leitung: Alexander Soddy
Inszenierung: Axel Köhler


Ottokar: Sebastian Wartig
Kuno: Michael Eder
Agathe: Julia Kleiter
Ännchen: Carolina Ullrich
Kaspar: Matthias Henneberg
Max: Torsten Kerl
Der Eremit: Alexandros Stavrakakis
Kilian: Bernhard Hansky
Erste Brautjungfer: Gabriele Berke
Zweite Brautjungfer: Rahel Haar
Dritte Brautjungfer: Jana Hohlfeld
Vierte Brautjungfer: Heike Liebmann

 

Sächsischer Staatsopernchor Dresden
Sächsische Staatskapelle Dresden

 

 

【Internet Normalpreis】 54,00€

Der fliegende Hollander@Semperoper Dresden

  • 2018.02.11 Sunday
  • 23:58

約1年半ぶりのドレスデン。前回はSemperoperで演奏を聴く機会がなかったが、今回は今日明日と2夜にわたってここでの演奏を聴くために事前手配して万全の準備。

今日はまず「さまよえるオランダ人」だ。

 

オペラはどんな演出をするかで大方の評価が決まる。ワーグナーなら尚更のことだろう。今日見た舞台もどう解釈したらいいのかわからない点は多い。

第一幕、舞台は荒涼たる海岸線を思わせる風景。舞台左が海をイメージさせるが船の影はどこにもない。舞台左手前には”陸”と”どこか”を結ぶ渡り橋がかけられている。そして舞台上にはひとりの少女。そして出てきたのが葬列で誰かが埋葬された様子。

第二幕、冒頭の「糸紡ぎの合唱」では、妊婦姿の女声合唱団員がベッドに横たわり、マリーの介添えのもと、次々に出産していく。

第三幕、ベッドに横たわるダーラント。一方で人々の衣装は婚礼姿。そして鞄をもったゼンタはひとりどちらともなく旅立っていく。

浅学の自分でさえ言えるのは、少女とゼンタは一心同体。ゼンタの過去の姿が少女であり、最後はゼンタ自身が解き放されて旅立っていく。

 

しかし、演出がどうのこうの言う前に、まず驚愕したは生み出された音の図太さだ。

よくDresdenの音は”重厚”と形容されるが、まさしくその通りで、音に厚みがあるだけでなく、キュッ!としまり、それがまたよく響く。席は4層構造の最上階(4 Rang mitte)だったが、馬蹄形の劇場空間全体が共鳴装置になったかのように、最上階まで手に取るような音が飛んでくる。

それに加えて、オケのアンサンブル力の凄さと言ったら、半端ではない。音楽が指揮者の意図通りに縦横無尽に流れ続けているため、聴いている側が気を抜いたら乗り遅れそうになる。まさに生きた音が流れ続けているのだ。

そこに更にハイレベルの歌唱がプラスされて、音と歌が完全にシンクロし一体化。これ以上何を求めるだろうかというレベルの音の饗宴に圧倒された。

考えるに、卓越した個々の技術に加えて、その音楽が持つであろう微妙な間やフレージングを全員が共有しているからこそ、より優れた演奏が生み出されているのだと思う。
 

各ソリストも文句のつけようがない歌唱だったが、特に一人といえばゼンタのElena Pankratovaだろう。「ゼンタのバラード」は誰もが注目するが、平然と歌いきっていた。

 

また、合唱の上手さと言ったらこれまた比類なきものだ。

第一幕の終幕の男声合唱、引き続く第二幕を飾る「糸紡ぎの合唱」、そして第三幕の「水夫の合唱」はもちろんのこと、各幕にあるソリストと相前後する合唱を含め、音量、アンサンブルも含めて完璧!こんなに歌い込まれたアンサンブルを聴かせてくれる歌劇場もそう多くはあるまい。合唱ファンにはたまらない!

(終幕の”幽霊船”と水夫たちの合唱の掛け合い、聴くところによると”幽霊船”は外注らしいが、生だったのだろうか?一瞬録音を流して合わせてた?そこだけが気になったが...掛け合い自体は完璧だった。)

 

自分もこれまで海外も含め多くはないがオペラを見てきたが、今日のような異次元の体験は初めてだ。正直、ウィーンでもミュンヘンでも体験しなかった。また、日本のオケがオペラを演奏した場合と比較すると、”こなれ感”が全く違う。厳しい言い方をすれば、別物と言っていい。でもそれはやむを得ないことかもしれない。

 

今日の作品はちょうど今から175年前、ここで初演された。第二次大戦のドレスデン爆撃で一度は建物は瓦礫と化したものの、息吹は脈々と受け継がれているのだろう。人が伝統を作るが、伝統もまた人を作る、そう思いながら稀有な体験をした劇場を後にした。

 

 

 

 

〈Data〉

 

Der fliegende Holländer

Semperoper Dresden

18:00 Uhr Sonntag 11.02.2018

 

Musikalische Leitung:Asher Fisch 

Inszenierung:Florentine Klepper

 

Holländer:Andrzej Dobber
Senta:Elena Pankratova
Daland:Georg Zeppenfeld
Mary:Christa Mayer
Erik:Tomislav Mužek
Steuermann:Simeon Esper


Sächsischer Staatsopernchor Dresden
Sächsische Staatskapelle Dresden
Vokalensemble der Theodore Gouvy Gesellschaft e.V.

 

【Internet Normalpreis】 62,00€

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728   
<< February 2018 >>

いらっしゃい!

ブログパーツUL5

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM